食の安全よりも自由貿易が大事ですか

総務省統計委員会の西村清彦委員長が多忙を理由に国会審議に
協力しない意向を示したとする文書を、総務省職員が西村氏に
無断で作成し、野党に示していたことが二十五日、明らかになっ
た。西村氏は不快感を示し、石田真敏総務相衆院予算委員会
陳謝した。」

東京新聞の記事の引用なんだけどね。総務相の謝罪の言葉って
これでしょ。

「不正確な文書が出回ったことは大変申し訳ない」

言っておきますけど、「不正確」じゃなくて「捏造」ですからね。
犯罪ですよ~。

『タネはどうなる?!──種子法廃止と種苗法運用で──』(玉田
正彦 サイゾー)読了。

米、大豆、麦など、野菜を除いた主要作物の安定した生産と普及を
促進する為、国の管理下、都道府県が優良な品種を選んで増殖させ、
安定して農家に供給すること並びに、原種、原原種の維持を義務付
ける。

所謂「種子法」によって、戦後日本の農業と食は守られて来た。その
種子法が2018年4月1日にひっそりと廃止された。

大手メディアの報道もほとんどなかった。だから、私が知ったのも
廃止が決定してからだった。これはまずいんじゃないか?そんな予感
を裏付けてくれたのが本書である。

民主党鳩山由紀夫政権下で農水相だった時には著者にいい印象を
受けなかったのだが、本書は農業の素人にも理解しやすいように
種子法廃止と種苗法改正によって、どのような影響があるのかを
記している。

先日読んだ『ファーマゲドン』で食肉の将来に不安になったのと
同様に、本書では農作物の近い将来に多大なる不安を抱かせる
内容になている。

なんだろうな…と思う。農家が種子の自家採取を自家採取をするの
は当たり前にことだと思っていたのに、農水省令で例外が認められ
ているなんて知らなかった。そして、将来的には原則禁止を想定して
いるなんて。

これは「農家は企業からタネを買え」ってことだよね。モンサント
などの遺伝子組み換え作物の種子を売っている多国籍企業があるよ
ね?しかも種子だけじゃなくて、農薬・化学肥料もセットでの販売。
おまけに農薬も化学肥料も「これだけの量を使いなさい」って契約
になるんだよね?

「民間の活力を活かす」と日本政府は言うけれど、すべては日本の
農業市場を多国籍企業に開放する為なんじゃないのか?

すでに日本で栽培されている野菜の種子は90%が海外産だと言う。
ならば、消費者の知らぬ間に遺伝子組み換え作物の認可が増え、
気がついたら食品パッケージから「遺伝子組み換えではない」と
の表示がなくなっているのではないか。

根底にあるのはTPPだ。水道の民営化もその為だろう。水も、農産物
も、私たちの健康に直結する。特に遺伝子組み換え作物については
マウスや豚での実験で異常が現れることが明らかになっている。

だから、ロシアなどでは禁止されているし、遺伝子組み換え作物
市場を縮小している国も多い。それなのに、日本は世界と逆の方向
へ向かおうとしている。水道民営化もしかり…だ。

遺伝子組み換え作物だけではない。雄性不稔F1種の普及が人体に及ぼす
影響も不気味だ。

農業に携わる人たちだけではなく、一般消費者こそ本書を読んで考える
べきだと思う。自由貿易の促進の為に、食の安全をないがしろにして
もいいものだろうか…と。