傍受記録から読み解く二・二六

出馬表明、出ました。バーニー・サンダース上院議員が2020年
アメリカ大統領選へ向けてやる気満々である。

そして既に10万人が寄付をしているとか。バーニー旋風、再びと
なるかな?ちょっと期待しちゃうわ。

『盗聴 二・二六事件』(中田整一 文春文庫)読了。

「私が最も頼みとする大臣達を悉く倒すとは、真綿で我が首を
締めるに等しい行為だ」
「陸軍が躊躇するなら、私自身が直接近衛師団を率いて叛乱
部隊の鎮圧に当たる」

昭和天皇を激怒させた、陸軍皇道派青年将校らによる二・二六
事件が発生したのは1936年の2月26日である。

事件発生に大きな影響を与えたと言われる北一輝、事件の首謀者の
ひとりと目される安藤輝三、陸軍幹部らの電話交信を記録した録音
盤の内容を元に、事件の推移や背景を追ったのが本書である。

著者は発見された録音盤をきっかけとしてNHK特集「戒厳指令
『交信ヲ傍受セヨ』二・二六事件秘録」、その後の取材過程で
入手した裁判資料から「二・二六事件 消された真実―陸軍軍
法会議秘録」などの映像ドキュメンタリーを手がている。

明治帝国憲法下でも通信の傍受は違法である。しかし、二・二六事件
発生以前から陸軍内部になんらかの動きがあると危惧していた憲兵
は密かに電話内容を盗聴し、事件発生後は戒厳司令部に引き継がれた。

著者の取材が始められたのは昭和50年年代。辛うじて事件関係者の
数人が存命していたタイミングだ。録音技術の提供者、戒厳司令部
で実際に盗聴作業に当たった元軍人等の証言が取れているのは貴重
なのではないかと思う。

通信傍受の録音盤20枚はNHKから、軍法会議資料については主席判事
だった人の自宅から発見されているのを考えると、まだどこかに日の目
を見ずに眠っている資料があるのではないかと感じる。

本書の中で特に興味を惹かれたのは、事件後に処刑された北一輝
ついてである。皇道派幹部たちの関与を薄める為の人身御供なので
はないか。だって、皇道派のシンボルであった荒木貞夫などは天寿を
まっとうしているのだから。

本書の大本となった盗聴記録の録音盤は20枚だが、実際には40枚が
あるらしい。残りの20枚が今後、どこからから出てくる可能性は
あるのだろうか。

発見されたら、事件にまた新たな一面が出て来るのではないかと
思う。