世界征服に銃はいらない

東京電力は本当に事故の当事者であるという意識はあるの
だろうか。

なんだよ、汚染水垂れ流しで10か月公表せずって。まだ
何か隠してないか?怪しいもんだ。

モンサント 世界の農業を支配する遺伝子組み換え企業』
(マリー=モニク・ロバン 作品社)読了。

TPPをはじめとした、アメリカが仕掛ける食の世界戦略を解説した
『食の戦争 米国の罠に落ちる日本』(鈴木宣弘 文春新書)の
なかで遺伝子組み換え作物だ。

その遺伝子組み換え種子の世界シェア90%を誇るのが本書が
取り上げている多国籍企業モンサント。本社はアメリカ・セント
ルイス、日本にも支社がある。

著者は映画「モンサントの不自然なたべもの」の監督であり、
本書は映画の為に行った取材を元に書かれている。映画は観て
いないのだが、本書だけで十分に怖い。

モンサントは遺伝子組み換え種子に辿り着くまでにも、多くの
人々を殺傷している。それは発がん性のあるPCBであり、
ヴェトナム戦争で大量に散布された枯葉剤エージェント・オレ
ンジであり、食肉や牛乳に残留してアレルギーやホルモン異常
を引き起こす牛成長ホルンである。

販売商品が次々と人の生命を脅かす。こんな企業が何故、成長を
続けるのか。

恣意的なデータの抽出、データのねつ造は当たり前。ロビー活動で
自社製品の市販申請を勝ち取るのは勿論のこと、研究者には研究
資金を、政治家には寄付金をばら撒き、自分たちの懐に抱き込む。

監督官庁に圧力をかけるのなんて朝飯前。自社の幹部を政府中枢に
送り込み、政府中枢の人間を自社へ迎える「回転ドア」じゃ規制
も何もあったもんじゃない。

モンサントが行った実験を批判する科学者がいようものなら、
あらゆる手段を使って誹謗中傷し、内部告発者はある日突然、
窓際に追いやられるどころか、不当に解雇される。

モンサントは自然環境を考える会社だと自分で言う。だが、
モンサントの除草剤と、その除草剤に耐性のある遺伝子組み
換え種子は土壌を荒廃させ、作物の収穫量は年々減少して行く。

遺伝子組み換え作物を与えたラットの実験では、多くの異常が
見つかっているのだが、モンサントはそれにも知らんぷり。

本書では「これでもかっ」というくらいに遺伝子組み換え種子の
脅威が紹介されている、特に南米のトウモロコシと大豆、インド
の綿花の例は恐怖だ。遺伝子組み換え種子は在来品種にまで
影響を与え、インドでは在来品種の種子の入手が困難になって
いるとか。

さあ、どうするよ日本。TPPに参加してモンサントの遺伝子組み換え
種子や遺伝子組み換え作物を行けいなきゃいけなくなったら?
今でこそ食品パッケージに「遺伝子組み換えではない」と表示
されているが、モンサントにねじ込まれたらこれも出来なくなる
かもしれない。

食べたくないよ、遺伝子組み換え作物なんて。だって、モンサント
の除草剤に耐性のあるように作られた遺伝子組み換え種子って
結局は「毒」が遺伝子に組み込まれているってことでしょう。

もっと怖いのは、運搬の途中でこぼれた遺伝子組み換え種子や、
遺伝子組み換え作物の畑から飛んで来た花粉が、在来品種に
受粉してしまい、いつの間にか遺伝子組み換え作物がそっち
こっちにはびこることだ。気が付いたら、そこらじゅうに
遺伝子組み換え作物って。うわぁぁぁ。

本書は極めて冷静に怖いことが綴られている。世界を征服しよう
と思ったら、銃なんていらないんだよね。食糧を抑えちゃえば
いいんだもの。人間が生きていく上でなくてはならないもの
だもん。

いかに儲けるか。モンサントの社是ってこれだけだよな。消費者
の健康なんてまったく考慮してない。実際、散布されたモンサント
の除草剤を浴びて亡くなった人も多くいるんだもの。

あぁ、いつか日本にも遺伝子組み換え作物が溢れるんだろうか。