最高司令官は戦場のリアルを知らない

韓国が福島第一原発の汚染水の扱いについて懸念している
ことが報道された。

日本のテレビのコメンテーターはこれさえも韓国バッシング
のネタにするのね。

そうじゃねぇだろう。我々日本在住の者こそが、汚染水の
処理問題をもっと取り上げるべきじゃないのか?

『兵士は戦場で何を見たのか』(デイヴィッド・フィンケ
 亜紀書房)読了。

なんで翻訳版では出版順ではなかったのだろう。『帰還兵は
なぜ自殺するのか』の前作が本書である。原書ではこちらが
先に発行されているのに。

バグダッドの治安維持とイラクの自由のために」。そんな
大義名分を掲げて、子ブッシュ大統領が行ったイラクへの
2万人の追加派兵。この時に派兵されたある大隊に密着取材
して、戦場で何が起きてるかを伝えている。

いつ、どこで、誰に狙撃されるか分からない恐怖。隣にいた
兵士が次の瞬間には無惨な死体になっている現実。誰がテロ
リストか、誰が一般人なのか、判断する基準のない混乱。

恐怖が、焦りが、怒りが、兵士を暴虐に駆り立てる。そうして、
繰り返される現地の市井の人々への虐殺。これが、アメリカへ
の、アメリカ兵への憎しみを増殖させる。

平均年齢19歳の兵士たちが、どこが前線とも分からぬ戦場へ
送り込まれる。いくら訓練を積んでいようとも、戦場のリアル
は実際にその場に立たなければ実感は出来ないのに。

戦争は人間を壊す。それは、戦場となった国の人々は勿論の
こと、戦場に駆り出された兵士をも壊すのだ。だから、命を
失わずに故郷に帰還した兵士さえ、助かった命を自ら捨てる
ことになるのだ。

最高司令官は戦場のリアルを知らない。だから、国の、自身の
メンツの為にやすやすと兵士を戦場へ送り出す。その兵士の
なかから「英雄」が生まれれば、プロパガンダとして利用する
ことが出来るのだから。

全編が読んでいて苦しい。なかでも第5章で鷺池挙げられている
ロイター通信の記者・カメラマンへのアメリカ軍の誤爆事件は、
パレスチナ。ホテル砲撃事件を思い出し、暗澹たる気持ちに
なった。

朝鮮戦争の昔から、アメリカが介入すると碌なことがない。
朝鮮半島は分断されたまま、イラクアフガニスタンもいつ
まで経っても治安が安定しない。

そうして、心と体に深い傷を負った兵士たちと、アメリカへの
憎しみを募らせる人々だけを増やして行くのだ。

 

兵士は戦場で何を見たのか (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ II-7)

兵士は戦場で何を見たのか (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ II-7)