究極のポジティブ・シンキング

梅雨なのに雨が降らないねぇ。ジメジメの梅雨は好きではない
けれど、雨が降らなきゃ水不足になるし作物も育たたない。

そしてなにより、紫陽花にはやっぱり雨が似合うのだ。ご近所の
庭で紫陽花が咲いているけれど、雨がないのは少々寂しいね。

真珠湾からバグダッドへ ラムズフェルド回想録』(ドナルド・ラムズ
フェルド 幻冬舎) 読了。

2015年秋の受勲者名簿に、その名前はあった。ドナルド・ラムズ
フェルド。一瞬、目を疑った。授与されたのは旭日大綬章。昔で
言えば「勲一等」。

何の冗談だと思った。でも、日本の大手メディアはこの人選を
まったく報道しなかった。叙勲には官邸のからの強い推薦が
あったらしい。

平和憲法を戴く日本が、天皇陛下の名前で「戦争屋」に勲章を
与えるとは世も末だと思ったものだ。しょうがないか、安倍政権
だもの。

本書は最年少と最高齢の2度、アメリカの国防長官を務めた
「戦争屋」ドナルド・ラムズフェルドの自伝である。

訳あって、幻冬舎太田出版の出版物は買わないことにしている
ので本書は友人からの頂きもの。出典一覧を含めて900ページに
及ぶ大作なんだけれど、全編これ言い訳というか責任転嫁の書だ。

自己正当化を語らせたらこの人の右に出る者はいないだろうっていう
くらいに他者の人物評を描きながら、「自分は悪くないんです」が延々
と続く。

正直と言えばそうなのだろう。未だにヴェトナム戦争イデオロギー
為の戦争だと思っているようだしな。

アメリカ政治の内幕を垣間見るのにはいいけれど、元々ラミー嫌いな
私ような読み手はもっと嫌いになること請け合いだ。

イラク戦争の時、開戦に反対するフランスとドイツを「古いヨーロッパ」
と呼んで、当時のフランス外相から「内戦や革命、世界大戦を体験し
た古いヨーロッパから忠告する」と皮肉を言われたんじゃなかったか。

アメリカは勝ち続けなくてはいけない」がラミーの信条のようだが、
朝鮮戦争以降、勝ったことがあったか?と思うんだよね。

でも、失敗を失敗と認めなければ「負け」じゃないんだよな。ラミーの
考え方がまさにこれ。究極のポジティブ・シンキングである。

というか、現実から目を背けてるとしか思えないんだが…ブツブツ。

ヴェトナム戦争の視察に行った際、アメリカ軍兵士がヴェトナム語を
理解しないまま派兵されたことを批判していたのに、自分が国防長官
になったらアラビア語を理解しないでイラク戦争をおっぱじめた。

そうして世界最強だったアメリカ軍に壊滅的な打撃を与えたんだよね。
フセイン大量破壊兵器なんてなかったのにさ。

イラク戦争の検証さえせず、こんなラミーを叙勲しちゃった日本政府も
恥ずかしいわ。