これも沖縄への愛だろう

憲法を改正して大統領の権限を大きくするのはどうでしょう?と
いう国民投票がトルコで始まった。

賛否が拮抗しているらしい。反対派はエルドアン大統領の権限が
今以上に拡大して独裁が進むを懸念しているようだ。

あれ?アジアのどっかの島国と似てないか?

『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史 下』(佐野眞一  集英社
文庫)読了。

野底土南(ぬかどなん)の名前は竹中労の著作で知った。思えば
竹中労も沖縄に魅了された人だったのだもね。野底は2007年に
亡くなっているのだが、病床とは言え本書ではインタビューが
出来ているのが凄い。

青い空と青い海。日本国内の南国リゾートだけではない面が、
下巻でもてんこ盛り。上巻はアウトロー色が強かったけれど、下巻は
政治や経済、芸能の話を主に扱っている。

日本に駐留している米軍の基地の多くを担っている沖縄。基地
問題をメディアが取り上げる時には、当然のように基地の危険性や
米兵による犯罪などが多くを占める。

だが、基地問題の裏側には軍用地主の存在があることは一切報道
されない。本書ではこの軍用地主にも切り込んでいる。

沖縄最大の軍用地主であり、全国長者番付にもランキングされる
竹野一郎にこそ面会は叶わなかったが、「沖縄県軍用地等地主会
連合会」で事務局長から話を聞いている。

反戦地主ではない軍用地主の連合会側からの証言として、これは
貴重な話だろうな。米軍の勝手な接収から現在の制度に至る変遷
が分かりやすい。

そして一番興味深かったのは琉球王朝の尚家の宝物にまつわる章。
沖縄戦で上陸したアメリカ軍の軍人が、戦利品として持ち帰った尚家
の王冠や文物についてはミステリーを読むようだ。

沖縄戦、米軍基地、米兵による犯罪。本土の犠牲者としての面も勿論
あるのだが、それだけで沖縄を語ってはいけないのだろうなと改めて
思った。

特に琉球王朝についてはもっときちんと学校で教えるべきだと思うわ。

尚、本書では民主党政権下(当時)でごたごたした尖閣諸島問題も取り
上げており、謎の所有者一族への接触も試みている。この一族もなんと
も謎が多くで面白かった。民主党政権については気持ちがいいほど、
ボロクソに書かれているけどね。特に鳩山”ポッポ”由紀夫については
「佐野さん、筆が滑りすぎですよ」って感じるくらいに糞味噌である。

読み終わって思ったんだけど、やっぱり琉球独立論はある面、正しい
のかもしれない。ただ、現在の沖縄が琉球王朝の時のように経済的
に独立できるかには疑問もある。

沖縄振興予算や米軍基地関連の収益がなくて、やっていけるのだろう
かって思うんだよね。今でさえ失業率が高いのだから。

紋切り型ではない沖縄がここにある。これも著者の沖縄への愛情で
あるのだろうと感じた。