沖縄慰霊の日に考える

沖縄慰霊の日である。珍しく平日が公休日になったので、昼から
NHKで追悼式の中継を見た。

翁長県知事の平和宣言には拍手と指笛。来賓であり日本国首相で
ある安倍晋三のスピーチの途中では「帰れ」「嘘言うな」の野次。

安倍のスピーチ中に「頭(こうべ)を垂れて」とあったが、黙とうの時、
垂れてなかったよね。きっちりテレビに映ってたよ。

安倍晋三よ、「平和の礎」の前で長い時間、手を合わせている人の
姿を見たか?彫られた名前に手を当てて、涙を流している人の姿を
見たか?

見ちゃいないだろうな。式典後の翁長県知事との会談を拒否した
くらいなのだから。

※以前、NHKスペシャルで放送された「昔、父は日本人を殺した」
 50分くらいある動画なので、時間があれば見て下さい。
http://www.dailymotion.com/video/xw5cqn_%E6%98%94-%E7%88%B6%E3%81%AF%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E3%82%92%E6%AE%BA%E3%81%97%E3%81%9F-%E6%B2%96%E7%B8%84%E6%88%A6%E3%81%A8ptsd_news

『フォト・ストーリー 沖縄の70年』(石川文洋 岩波新書)読了。

報道カメラマン・石川文洋。私の中ではヴェトナム戦争を取材した
カメラマンとの印象が強い。なので、沖縄出身であることは知って
はいたが、僅か4歳で本土へ移住していたことは知らなかった。

当然、沖縄で過ごした時間よりも本土で生活している年月が多い
文洋さんだが、自身は「沖縄人」との意識が強い。そして、自らを
「在日沖縄人」と呼ぶ言葉に、本土に生まれ育った私は多大なる
うしろめたさを感じる。

文洋さんは沖縄戦を知らない。おばあ様から話を聞いた。その沖縄戦
の話が、ヴェトナム戦争に重なる。ヴェトナムで犠牲になった一般市民
の姿が沖縄戦で犠牲になった市民と重なる。

そのベトナム戦争には沖縄の米軍基地から多くのアメリカ兵が送り
出され、戦闘機が向かった。

文洋さんの眼は、自身が見聞きしたヴェトナム戦争を通して沖縄を
見る。明治政府による琉球併合以降、沖縄は中央政府の政策に
翻弄され続ている。

先の大戦後のアメリカによる占領、日本返還後も本当の大部分に
米軍基地が残り、そして現在は美しい辺野古の海が新たな基地
建設の為に埋め立てられようとしている。

静かに、深い怒りがある。「戦争は命を奪う。個人、公共の財産、
文化財、自然を破壊する。軍隊は民衆を守らない」。文洋さんの
こんな言葉が耳に痛い。

沖縄に何もかもを押し付けて来た70年ではなかったのだろうか。
無関心でいた訳ではないけれど、沖縄を犠牲にすることで戦後
の70年を築いて来たことを自覚しなくてはいけないのではないか。

未だ、私は沖縄に行けない。それはある種のうしろめたさがあるから。
でも、行かなきゃけないんだよな。

そうして、この国のやることに疑問を持って、理不尽には怒りを持続
させなきゃいけないんだよな。

時代時代を写した写真も豊富に掲載されているが、本文と一致して
いないものがあるのが少々残念。

だが、文洋さんの沖縄への想いがひしひしと伝わって来る良書だ。