地中からの魂の叫び

久し振りの日曜出勤である。そして、疲れた。暇疲れである。
1日の受電件数が、忙しい時の平日の1時間分。

睡魔と闘い続けた8時間だった。

『ガマ 遺品たちが物語る沖縄戦』(豊田正義 講談社)読了。

2015年の今年は戦後70年。なので、NHKスペシャルは戦後70年に
ちなんだ内容の放送が多い。先日は沖縄戦を特集していた。

番組の冒頭、沖縄戦を戦った元アメリカ兵へのインタビューが流れ
た。彼は言う。

「パニックだった。機関銃を撃ちまくった。翌朝に見た遺体は市民
ばかりだった」。そして、声を詰まらせた。

アメリカ軍の本土上陸までの時間稼ぎの為に捨て石にされた沖縄。
多くの市民が巻き添えになり命を落とした。

沖縄本島に上陸するアメリカ軍から逃れる為に、多くの市民はガマ
と呼ばれる自然に出来た洞窟に身を潜めた。戦後、そのガマから
遺骨や遺品が発見されている。

本書はガマから発掘された遺品と、アメリカ兵が戦利品として祖国へ
持ち帰った略奪品を巡る物語だ。だが、純粋なノンフィクションでは
ない。3つの物語それぞれにモデルとなった人物はいるが、事実を
ベースにしたフィクションである。

それでも、哀しく切ない。

国民小学校を首席で卒業した少年が、母からプレゼントされた硯が
戦後、既に老齢となった持ち主の元に戻る「哲也の硯」。

「新太の目覚まし時計」は音楽教師を夢見ながら、鉄血勤皇隊に徴用
され、ガマで亡くなったであろう少年兵の遺骨発掘の物語。

最終章「夏子のアルバム」は戦利品としてある家族の写真アルバムを
持ち帰った元アメリカ兵が老境に差しかかかってから「持ち主に返し
たい」と沖縄慰霊の日に沖縄を訪れる。

ガマでの生活や戦闘の様子は、経験者の証言や残された資料から
繋ぎ合わせたものだろう。多少の脚色はあるのだろうが、本筋は
実際に起こったから大きくは外れていないのだろう。

特に「夏子のアルバム」に登場する元アメリカ兵が、アルバムを返却
しようと思い立ったきっかけが辛い。それまで彼にとっては沖縄戦
戦って生還したことは勲章だった。それが、老齢になってから自分の
過ちを気付かされるのだもの。きついわ。

本書は児童書の類にはいるのだろうな。漢字にはほとんど振り仮名が
ふってある。小学校高学年から中学生向けか。子供たちは勿論だが、
戦争を知らない世代の大人たちにも読んで欲しい。特に、私と同じよう
な本土の人間には。

海外での遺骨収集については時折ニュースになる。しかし、沖縄でも
ボランティアやNPOが今でも地中からの魂の叫びを拾い集める作業
をしている。

戦後70年が経つ。だが、戦争はまだ終わっていない。そして、今日、
6月21日は沖縄本島での日本軍最後の拠点・摩文仁の軍司令部が
アメリカ軍に占拠された日だ。