平和と福祉の看板はどこへ行った

またもや沖縄でいたましい事件だ。それなのに「タイミングが悪い」
と言う与党議員って誰だよ。

米軍に対する憤りでも、被害者に対する追悼でもなく…だ。こういう
時こそ実名報道だろうよ、マスコミよ。

伊勢志摩サミットでのアメリカ・オバマ大統領来日を控えての発言な
のだろうけれど、自国の歳若い女性が暴行された上に殺害されて
いるんだよ?なんとも思わんかね?

公明党 創価学会と50年の軌跡』(薬師寺克行 中公新書)読了。

創価学会の文化部として誕生した公明党は2014年に結党から50年
を迎えた。本書は巨大な支持母体を持ち、政権与党に名を連ねる
公明党の50年の変遷を辿っている。

公明党本部でも党史を出版しているようだが、俯瞰した党史として
読むなら本書は良書だろう。

結党当初は創価学会の教えを反映しての宗教色の強い主張をして
いた公明党だったが、1969年に明治大学教授だった藤原弘達が書い
た『創価学会を切る』に対しての言論出版簿外事件を契機に政教
分離を打ち出す。但し、学会色を前面に押し出すことをしなくなった
だけで、現在でも票田は創価学会信者であることに変化はない。

この大票田が公明党の強みだ。投票率がどれほど低かろうが、
組織的な得票が安定した議員数に直結する。そして、これに目を
つけたのが自民党だ。

55年体制が終焉を迎え、国政選挙があるごとに投票率が低下し、
度重なるスキャンダルで盤石だった支持層が弱って来た自民党
とって、公明党保有している票田は喉から手が出るほど欲しい。

だからか…と思う。非自民連立政権に公明党が名を連ねた時、
自民党はとことん公明党を攻撃した。創価学会が支持母体である
ことを事あるごとに持ち出し、政教一致を猛攻撃した。

それが今はどうだろう。手のひらを返したような自公連立政権で
蜜月が続いているではないか。

あれだな。金目当てで言い寄って来た男に時々暴力を振るわれる
のだけれど、たまに優しい言葉をかけられたりプレゼントをもらった
りして「この人、私がいないとダメなの」と思ってしまう女性のよう
だな。まぁ、結局は選挙の為ならどんな政党とも組むカメレオン
でもあるんだけど。

ただ、現在は自民党に押し切られることが多い公明党だけれど、
その昔は自民党を追及していた時代もあったんだよね。創価学会
が絡んでいなければ、結構まともなことを主張していることもあるし。

「出たい人より出したい人」という候補者選びの様子など、これまで
分からなかったこともあって勉強になった。

「平和と福祉の党」との党是を掲げている公明党。山口代表曰く
自民党の暴走に歯止めをかける役割をしている」そうだ。今後
予定されている消費増税に対して軽減税率対象品目の拡大は
公明党の手柄だろうが、安全保障関連法案に関してはなす術も
なく自民党に押し切られていやしないか。

党是と現実との乖離。この溝をどうやって埋めるのかが公明党
今後の重要課題になるんじゃないのかな。

2015年夏、安全保障関連法案に対して公明党の支持母体である
創価学会信者の中からも反対の声が上がっていたものね。

巻末には公明党関連の年表、結党以来の国政選挙の候補者数・
当選者数・得票数の一覧表もあり資料としても充実している。

全体を読み通すのが面倒臭かったら、「終章」と「あとがき」だけを
読んでも十分面白い。