もう一つの20世紀の記録

予想通り、今回の総選挙は前回の投票率を下回っているとか。
ということはですよ。自民党圧勝かよ。

無党派層が投票に行ってないってことだもんな。創価学会
組織票がある公明党なんて、どんなに投票率が低くても安泰
だろう。

我が選挙区の立候補者なんて、自民、民主、共産の3人だもの。
どう選べと言うんだろうなぁ。

あ〜あ、これで安倍ネオナチ政権が続くのかよ。うへ。

『百年の手紙──日本人が遺したことば』(梯久美子 岩波新書
読了。

先月だったか。谷潤こと、作家・谷崎潤一郎の未公開書簡
288通が見つかったとのニュースがあった。妻・松子夫人
やその妹と交わした書簡だと言う。

作家の全集にはほぼ1巻、書簡集がある。購入すると真っ先に
手にするのがこの書簡集だ。日記と共に、手紙はその人の
生活を覗き見する楽しみがある。

20世紀の日本人が遺した100通の手紙を元にして綴られた
エッセイが本書だ。

手紙の内容とそれが書かれた時代背景、人物等について、それ
ぞれ2~4ページでまとめられている。

これは時代の証言としての資料ではないだろうか。先の大戦
戦地から家族へ送られた手紙は勿論だが、政治家が妻になる
女性へ送った熱烈なラブレターもある。

本書で一番の衝撃だったのは大逆事件で収監された管野すがが、
幸徳秋水の為に弁護士を探して欲しいと新聞記者へ依頼した
手紙だ。

出獄する女囚に頼んで投函したのだろうと著者が推測する
手紙に文字はない。しかし、光にかざすと紙面には小さな
穴が開いている。秋水を助けたい。その激しい思いが、
ひとつひとつの穴に込められている、哀しい手紙だ。

田中正造明治天皇への直訴状、昭和天皇香淳皇后から
疎開中だった今上天皇への手紙、いじめによって自殺する
しかなかった大河内清輝くんの遺書。

有名・無名を問わずに掲載された手紙は、それぞれに心を
打つものがある。

インターネットが発達し、手紙よりもメールのやりとりが
多くなった。それでも、数少ない親しい友達には年に数回、
近況報告の手紙を出す。

本書には収録されていないが、野口英世の母・シカさんの
手紙など、手書きで書かれた文章はメールとは違った人間味
を感じる。