祝!ノーベル文学賞受賞

ベラルーシの作家、スベトラーナアレクシエービッチさんが
ノーベル文学賞を受賞した。

日本では『チェルノブイリの祈り』しか翻訳されてないけど、
この作品だけで十分にいいお仕事をなさっている。

今回の受賞を記念して、以前に読んだ時の感想を再掲載する。
尚、読了日は2009年2月24日。

チェルノブイリの祈り』(スベトラーナアレクシエービッチ 岩波書店
読了。

1986年にそれは発生した。世界最悪と言われ、世界中が震撼した
チェルノブイリ原発事故。

本書は巨大事故に遭遇し、被災した人々へのインタビュー集である。

冒頭に登場する初期消火に当たった消防士の妻のインタビューだけ
でも、その内容は壮絶である。

自らも被曝の危険に晒されながらも、消防士ととしていち早く現場に
駆け付けた夫の看病に当たる妻。

彼女は何度も繰り返す。「幸せだったんです」と。そう、あの事故が
起きるまではささやかだけど幸せな生活を送っていた人たちなのだ。

それが原発事故で一変した。原子力発電所で何が起きているのか、
放射能はどういうものなのか。何も教えられず、危険性も告げ
られず、普段と同じ軽装のまま彼らはそこにいたのだ。

そして、突然の退去命令。

「一生働きづめで、さんざんつらい思いをしてきた。もう十分だよ。
なんにもいりません。死んだら楽になるだろうね。魂はともかく体は
休めるだろうから。娘や息子はみんな町におります。でも私はここを
離れませんよ。神さまは長生きさせてくださったが、幸せはくださらん
かった。」

汚染地帯の自分の家に戻った老婆の言葉が胸に刺さる。ニュースだけは
知ることの出来ない、人々の声だ。痛いじゃねぇか。

石棺に覆われたチェルノブイリ原子力発電所。その中には収容出来な
かった遺体が、未だに放置されている。