誰も責任を取らないシステム

昨日は東京大空襲72年目の法要へ。今日は政府主催の東日本大震災
犠牲者追悼式典へ。秋篠宮殿下並びに妃殿下がご臨席。

皇族のなかでも一番暇そうな東宮家は…(以下自粛)。

『フクシマ6年後 消されゆく被害 歪められたチェルノブイリ・データ』
(日野行介/尾松亮 人文書院)読了。

年間被ばく量20ミリシーベルト以下となった区域は順次避難解除。
おかしいのではないかと思う。20ミリシーベルトと言うのは、福島
第一原子力発電所の事故後の非常事態時に引き上げたままで
はないか?

通常は年間1ミリシーベルトのはずである。この数値にしても自民党
丸川珠代センセイは環境大臣当時に「科学的根拠がない」と無知
な発言をしていたが。丸川センセイ、避難解除される区域に住んで
くれないだろうか。

殊更、危険や不安を煽る気はさらさらない。しかし、それでも思うの
だ。「除染したので大丈夫です。年間20ミリシーベルト以下になりまし
た」と言われ、「はい、そうですか」と住民全員が帰還するだろうか。

山林は除染しない。これは国の決定だ。居住地域は除染したから
それで安全と言い切れるのか。水は、風は、どこから来る?山林
からではないのか。

除染されないままの土から木は栄養を摂り、枯れ落ちた葉が落ちて
腐葉土となり、また養分として木全体に行き渡る。そして、山に降った
雨は沢を流れ、川を流れ、海に注ぐ。

素人の私でも考え付くことなのだけれど、国は原発事故の被害を
どうしても小さくしたいようだ。

それは本書が取り上げている健康被害に対しても同じだ。唯一の
データとして参照されているチェルノブイリ原発事故の被災地での
データだが、元の報告書から恣意的に抽出されたデータだとしたら
どうだろうか。

本書ではチェルノブイリ原発事故の被災地で行われている健康診断
で得られたデータが、いかに歪められて日本に伝わり、それを根拠と
して「被曝との因果関係は不明」と片づけられている事実を掘り出し
ている。

改めて愕然とする。チェルノブイリ・データの恣意的な抽出も勿論だが、
誰も責任を取らないように進む、この国のシステムにだ。

チェルノブイリ原発事故の際、「日本ではあんなことは起こらない」とし、
深刻な原発事故を想定しなかったばかりか、健康被害に関しても因果
関係不明ですべて済まそうとしている。

小児甲状腺がんばかりが注目されているけれど、実際、ウクライナ
ベラルーシ、ロシアでまとめられた報告書ではIAEAなどの国際機関が
放射能が原因で起きるとしている疾患以外も増加傾向にあるではない
か。

被災地に住む人々に対して国が手厚い補償をすることを決めたチェル
ノブイリ法。日本でも与野党の一部国会議員が同じような法律を作ろう
としたが、出来上がってみれば原案からは程遠く骨抜きにされた内容で
「子ども被災者支援法」が出来上がってしまった。

福島第一原子力発電所の事故当時、すべてが混乱していた。だから、
初期被曝の程度は不明だ。特に半減期が短いヨウ素131の被ばく量
なんて計れていない。

福島県内に留まらない。東北・関東の広い地域で高い放射線量を計測
した場所もあった。チェルノブイリ原発事故に照らし合わせれば、放射性
物質が飛散した可能性があるすべての地域を対象として、住民の健康
診断を行うべきなのだろう。

だが、この国は安全ばかりをアピールする。2020年東京オリンピック招致
の為のスピーチで安倍晋三は何と言ったか。「汚染水は完全にコントロー
ルされている」と言わなかったか。

国の安全宣言を信じ、帰還した人々に後々健康被害が出たらどうなる
のだろうか。きっと国は何もしない。「線量評価が出来ていない」と言って
突っぱねるだけだろう。

原子力発電所の建設は国策だったのはないか。ならば、重大事故が起き
れば国が補償をするべきではないかと思うのだけれどね。

チェルノブイリ原発事故の被災地では事故後に生まれた世代も放射能
防護の勉強をしていると言う。道徳だとか、プログラミングだとか、英語
だとかの授業をする前に、放射能に対して正しい知識を持たせるよう
な授業が日本でも必要なのではないか。

だって、日本は原発大国なのだから。正しく知って、正しく怖がる。とても
必要なことだと思う。