プロパガンダはゾンビのように復活する

毎年のようにハルキストが大騒ぎをするなか、ボブ・ディラン
ノーベル文学賞を受賞した。

そして、タイでは文字通りの国父、プミポン国王が亡くなった。
微笑みの国は大きな悲しみに包まれている。しかも、即位するの
が、問題の多い皇太子だし…。

国民には妹君のシリントーン王女の人気が高いようだけれど、独身で
後継者がいないのが難点なんだろうな。それにしても、我が国の次代
より心配だよ、タイの次代は。

原発プロパガンダ』(本間龍 岩波新書)読了。

2011年3月11日の福島第一原子力発電所の事故が起きる前から、
原発安全神話については懐疑的だった。原子力だよ?核だよ?
安全対策は万全だというけれど、地震列島・火山列島の日本に
人間が制御出来ないモノを作って本当に大丈夫なのか…と。

だから、新聞紙面に掲載されていた電力会社の広告も胡散臭く
感じていた。専門家だとか、有名人だとかが、原発の必要性や
ら安全性を説いていても「本当かよ」って感じだった。

広告業界の片隅にいたから分かる。畳みかけるように何かを
主張する広告ほど、危険なものはない。著者の一連の原発広告
関連の書作を読んでいると「やっぱりな」との思いを強くする。

新聞に、雑誌に、テレビに、ラジオに。電力会社や関連団体のみな
らず、関係官庁までもが膨大な費用を使って安全神話を振りまいて
来た。メディアにとっては有難い広告主である。だが、この広告主
はメディアが本来、報道しなければならなかったことを潰して来た。

電力会社を少しでも批判したらどうなるのか。本書では報道すべき
ことを報道したのに、組織の保身の為に犠牲になった人たちの話
も詳しく書かれている。

そうだよね、田原総一郎氏もそのひとりだったんだよね。

クライアント・タブーは古くから言われていることだけれど、福島第一
原発事故以前のメディアの及び腰も酷いものだわ。それに輪をかけ
て酷いのは読売新聞だけれどね。

原発事故直後から姿を消していた電力関係の広告が、原発立地県
から徐々に復活している。あれからまだ5年しか経っていないのにね。
日本の原発すべてが停まっていても大停電なんか起きなかったのに、
今度は再稼働に向けてのプロパガンダかね?

電力関係の多くを手掛けたのは広告代理店最大大手の電通である。
電通の前身は「日本電報通信社」だ。戦前の満州鉄道調査部で、
対外宣伝と宣撫工作を担った。プロパガンダはお手のものだよね。

福島第一原子力発電所廃炉に向けての作業が続いているが、いつ
になったら完了するのかの目途さえ立っていないのが現状だろう。
廃炉費用だって実質、どれだけの金額がかかるのさえはっきりとは
していない。

なのに、原発プロパガンダは復活する。まるでゾンビのように。

国策として原発推進をしてきた自民党本部も、プロパガンダをまき散らし
てきたメディアの本社も、そのプロパガンダで金儲けをしてきた広告代理
店も、福島第一原子力発電所の近くへ移転したらいいのに。