踏み込んではいけなかった場所

EUのおっかさん、ドイツ・メルケル首相の携帯電話がアメリカの
情報機関によって盗聴されていたらしい。

翻って我が日本。安倍ちゃん首相の携帯電話は盗聴の心配は
ないと菅官房長官が太鼓判だ。

うん。盗聴するほどの人物じゃないってことだもんね。やっぱり
軽く見られてるんだな、アメリカに。

『アフガン侵攻1979-89 ソ連の軍事介入と撤退』(ロドリク・
ブレースウェート 白水社)読了。

バンジシールの獅子と呼ばれたマフマド・シャー・マスード
関した本を入手した。読もうと思ってはたと気が付いた。

アフガニスタンに関する本は何冊か読んだが、ソ連侵攻に
関してはきちんと読んでいなかった。分からないことも多い
軍事介入だったので、まずはアフガン侵攻を先に読んで
おかなければと探したのが本書だ。

ソ連不凍港を手に入れるためにアフガニスタンに侵攻
した」。当時、流布していた西側のプロパガンダを、私も
鵜呑みにした。

だが、元々はアフガニスタン国内の内戦である。クーデターに
より誕生した共産主義政権に対して、イスラムの教義を重んじる
ムシャヒディンがゲリラ戦を挑んだ。

アフガニスタン国内のことはアフガニスタン人同士で解決して
くれよ。え?援助はするけどさ、うちが軍を進駐されるのは
筋違いじゃね?

ソ連も最初は乗り気ではなかった。だが、アフガンの同志たち
は再三に渡ってソ連軍の進駐を要請する。そして始まった泥沼
の9年は、アフガン国内にも派遣されたソ連兵たちにも深い傷を
残した。

読み進むごとに目からうろこである。いかに日本で報道されて
いたソ連のアフガン侵攻がアメリカの言い分を垂れ流しして
いたかが分かる。

ソ連侵攻前夜から9年に渡る侵攻と撤退、その後までを俯瞰して
描いた良書である。何冊ものアフガン関係の本を読むのなら、
本書1冊で十分ではないだろうか。

徴集されたソ連兵のその後は切ないし、ソ連首脳部でも侵攻に
反対していた人々が多くいたことに驚く。

そして印象深かったのはやはりマスードである。9.11アメリカ同時
多発テロの2日前に彼が自爆テロによって暗殺された。その時、
プーチンが警告を発していたことも印象に残る。

アメリカはヴェトナム戦争で泥沼に嵌り込んだ。そして、ソ連
アフガニスタンで抜け出せない泥沼に嵌り込んだ。同じ泥沼
だけれど、違ったこともある。

ソ連兵たちが国に帰還した時、アメリカと並ぶ大国は崩壊の
危機に瀕していたのだ。