変貌する大国の中で

「戦争で取り返すしかないんじゃないですか」

またこんなことを言っているのか、丸山穂高は。今度は
竹島についてだよ。

北方領土の時と言い、よほど戦争がしたいのか?あ、それより
適応障害はもう治ったのか?どうせ詐病だろうけど。

誰か~、コイツを戦場の最前線へ連れて行ってくれないか。

『セカンドハンドの時代 「赤い国」を生きた人びと』(スヴェト
ラーナ・アレシエーヴィチ 岩波書店)読了。

1991年、ソ連邦崩壊。世界史年表にしたらたったこれだけの
文字数で済んでしまう。だが、その1行は多くの人々の生活を
根底から変えた。

これまでの価値観を180度変えてしまった「20世紀の実験場」
の崩壊は、市井の人々に何をもたらしたのか。「赤い国」を
生きた普通の声を集めたのが本書だ。

国ががらりと姿を変える。今まで「悪」とされて来たことが「善」
となり、「善」とされてきたことが「悪」となる。資本主義への
移行期間に、金儲けのチャンスを見出す人もいれば、ソ連時代の
価値観を捨て去ることへの感傷を抱え込む人もいる。

ソ連ユートピアのはずだった。アダムとイブが住んでいたのは
ソ連ではないのか?と言われるくらい。何故なら、着る物もなく、
食べる物もリンゴしかないのに、自分たちを幸福だと思っていた
から・・。あ、これはアネクドートだったわ。

社会主義から資本主義への転換。それがもたらしたのはハイパー
インフレと紙くず同然となったルーブル紙幣。そして、混乱の
どさくさに紛れて国営企業を手中にし、大金を懐にしたオリガ
ルヒと呼ばれる新興財閥の台頭だった。

「ロシアには強い腕が必要なんです。鉄の腕が。ムチを持った
監視者が。だから、スターリンは偉大なんですよ!」

このように語る人がいる。だから、ロシアはプーチンを選んだ。
再び「強いロシア」を実現してくれる指導者を求めて。

「あの頃は良かった」。実際にはデストピアだったソ連を、懐かし
み、「あの時代」に戻ることを希求する人のなんと多いことか。

以前、ルーマニアでもチャウシェスク時代を「あの頃は良かった」
と懐古する人たちが現われたのも、ソ連を懐かしむことと同じな
のかもしれない。

政治が、経済が、生活が、がらりと変わってしまったら誰でも
「昔に戻りたい」と感じるものなのだろうね。

ただ、近年の日本で「大日本帝国よ、もう一度」と夢見ている人
とは似て非なるものだとは思う。

600ページを超える大作だが、ひとつの国歌が体制を変化を余儀なく
された時、人々は何を感じ、何を思っていたのかを知ることの出来る
良書である。

尚、本書の著者がノーベル文学賞を受賞してから、日本でも岩波現代
文庫で作品が出ている。私がどうしても読みたい『アフガン帰還兵
の証言』も復刊してくれないだろうか。

 

セカンドハンドの時代――「赤い国」を生きた人びと

セカンドハンドの時代――「赤い国」を生きた人びと