人間であること

埼玉県と千葉県で発生した2件の通り魔事件の容疑者として、16歳の
男子高校生が逮捕された。

「通行人を殺・すつもりだった」と語っているとか。こういう通り魔事件を
起こす人って、必ずと言っていいほど「誰でもよかった」って言うんだ
けど、被害者は子供や女性、高齢者などの抵抗力の弱い人を選んで
るんだよなぁ。屈強な男性が被害に遭った…なんて聞かないもの。

逮捕された高校生、動物への虐待もしていたようだ。なんで、こんな事件を
起こしちゃったかなぁ。刺されりゃ痛んだぞ。ブツブツ…。

『ネルソンさん、あなたは人を殺・しましたか? ベトナム帰還兵が語る
「ほんとうの戦争」』(アレン・ネルソン 講談社文庫)読了。

ベトナム戦争症候群。ベトナム戦争から帰還した兵士たちが、残酷な戦場での
体験の為に社会に適応出来ずに家族からさえも見放されて行く。

著者もそのひとりである。父を知らない黒人家庭に生まれ、高校をドロップアウト
海兵隊に入隊し、沖縄に送られそこからベトナムの戦場へ旅立った。

18歳の不良少年は訓練と戦場での体験を通して、ベトコンを殺・すマシーンと
化して行く。しかし、あることをきっかけに彼は思い出す。「ベトナム人も自分
たちと同じ人間なのだ」と。

23歳で除隊した著者は、ベトナムの悪夢にうなされ家を飛び出し浮浪者と
なる。そんな時、教師となった高校の同級生と偶然再会し、彼女が教鞭を
取る学校でベトナム戦争について話して欲しいと請われる。

逡巡し、最終的に受諾した著者は子供たちの前でベトナム戦争について
語る。そして、本書のタイトルとなった質問が浴びせられる。「ミスター・
ネルソン、あなたは人を殺・しましたか?」。

体験したことを語ることが、あの凄惨な戦争を生き延びて来た自分の責任
ではないのか。著者は何度も日本を訪れ、子供たちに戦争体験を語った。
そして、国会で問題になっている沖縄の少女暴行事件に心を痛め、海兵隊
の沖縄からの撤退運動にも積極的に関わる。

国の為に心に大きな傷を負い、それでも語ることで戦争を憎んだ著者は
2009年3月26日、61歳で白血病の為にこの世を去った。

メディアの人間が書いたベトナム戦争関連の作品は何冊も読んだが、
本書は実際のベトナム戦争を戦った海兵隊員の体験として貴重な
1冊だ。

子供向けに発行されたものの文庫化。確か漫画も出ているはず。でも、
文章で読んで欲しいね、大人にも子供にも。