アルコール依存症は不治の病です

栃ノ心に続いて、豪栄道も途中休場かぁ。
寂しな、名古屋場所は。

失踪日記2 アル中病棟』(吾妻ひでお イースト・プレス
再読。

失踪日記』を読んだら、続編である本書を読みたくなったの
で再読した。

2度目の失踪から自宅へ戻り、仕事再開。とはならなかった。
漫画家としての仕事をほとんどしなくなった吾妻氏は、連続
飲酒状態に陥る。

そうして、1998年12月26日、奥様と息子さんに取り押さえられ
て遂にとある病院の精神科B病棟(別名アル中病棟)に強制入院
となる。

本書は入院1か月後から退院までの、アル中病棟での日々を描いて
いる。詳細に描かれているのは1か月後からだけれど、入院直後
の離脱状態(禁断症状)も冒頭で触れられているので、随所に
アルコール依存症になることの警鐘も含まれている。

ご自身の体験や、病院での治療の段階、アルコール依存症に対する
勉強の様子なども描かれているが、一番の注目は同じ入院患者に
対する吾妻氏の観察眼の鋭さだ。

実に様々な人が入院している。10年もアル中病棟に入院し住所も
病院になっている人、自ら「アル中なんです、入院させて下さい」
とやって来る人、退院後に再飲酒して入退院を繰り返す人、些細
なことで看護長と揉めて無理矢理退院して行く人等々。

前作『失踪日記』同様に、ギャグ漫画家ならではのユニークな筆致
で描かれているからか。依存症というかなり深刻な病気であるのに、
悲壮感が薄くなっている。まぁ、リアルに描いちゃうと描くご本人
も辛いのだろうけれどね。

それにしても入院患者を働かせる病院である。食事の配膳や掃除、
院内レクリエーションに至るまで。これ、みんな患者さんがやる
のだもの。それに食堂兼ホールが喫煙可というのも今じゃ考え
られないよね。

病棟内だけの生活から外出許可、その次には最低3回の外泊許可。
飲酒せずに無事に病棟に戻れれば退院時期が決定する。

自宅への外泊時、甘い物が食べたくてクッキーをむしゃむしゃと
食べている吾妻氏。それを目にした奥様が「ワインクッキーじゃ
ない。何しているのっ!」と、クッキーを取り上げるシーンには
少々ジーンと来た。そんなつもりじゃなかったんだよ~。

尚、アルコール依存症はお酒を断つと、無性に甘い物が欲しくなる
らしい。本書では省かれているが、ロールケーキ1本食いなんてこと
もあるそうだ。

そして、アルコール依存症は不治の病。何年、何十年、お酒を断って
も、一度でも飲酒してしまうと内臓や能をやられて死へまっしぐら
なのだそうだ。

本書の終わりで吾妻氏は無事に退院し、自宅へ戻る。その辺りの
描写には胸を突かれるものがあった。

 

失踪日記2 アル中病棟

失踪日記2 アル中病棟