取材旅行という名の失踪

病気への無理解で隔離政策が取られたハンセン病。その患者
家族が起こした賠償訴訟で原告側が勝利。国は「異例だが」
控訴しないと表明した。

この「異例だが」が重要。もう選挙の為としか思えないよね。
賠償の内容は今後の決定になるので、今回の国の控訴断念は
参院選の判断材料にしていはいけない。

賠償内容の詳細が判明するまで、要注意だ。

失踪日記』(吾妻ひでお イースト・プレス)読了。

「第34回日本漫画家協会賞大賞」「第10回手塚治虫文化賞マンガ
大賞」「平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞」「第37
日本SF大会星雲賞ノンフィクション部門 」と、数々の賞を受賞
した漫画である。

漫画家・吾妻ひでお氏の2度に渡る失踪事件を、ご本人が描いた
実録漫画(?)である。あ、多分、脚色している部分はあると
思うのだけどね。

ある日突然、原稿をほっぽり出して仕事場から逃げ出してしまう。
当然のように仕事は激減。そうして「取材旅行」と言う名の失踪
劇の幕が上がる。

作家・松井計氏もホームレス体験を綴った作品を出しているが、
松井氏は経済的状況でホームレスにならざるを得なかったこと
の体験ルポだった。

これに対して吾妻氏のホームレス体験は、原稿を落としたことも
あるのだろうが根底には現実逃避もあるのではなかろうか。その
現実逃避が、本書の続編となる『アル中病棟』を描く原因になった
アルコール依存症への道まっしぐらになったのかも。

厳しい生活だったと思うのよ、ホームレスって。実際、吾妻氏も
失踪中に屋根がある場所で眠れる有難さを訴えているしね。でも、
絵柄の影響もあって少々おミカルでもある。

特に2度目の失踪の途中で東京ガスの孫請け会社の配管工にスカウト
されたお話は結構笑える。

ただ、奥様やお子さんたちは大変だったろうと思うのよ。一旦は
戻って来た吾妻氏が、再度、取材旅行に出るなんて思ってもいな
かっただろうから。

描かれた作品の裏側には、ご家族の苦労もあるのだと思う。

 

失踪日記

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