モルモットにするんじゃない

昨日は帰りが遅かったので、日記はお休み。

自身の被爆体験を元にした漫画『はだしのゲン』の作者・中沢啓治氏が
亡くなった。今月、自伝が出版されたばかりだった。肺がん。享年79歳。

小学校5〜6年の時の学級文庫にこの漫画があり、原爆の怖さと被爆
した方々の苦しみを知った。ご冥福を祈る。合掌。

『核の海の証言 ビキニ事件は終わらない』(山下正寿 新日本出版社
読了。

東京・夢の島公園に「第五福竜丸展示館」がある。何度か足を運んだ。
1954年3月1日、マーシャル諸島ビキニ環礁で行われたアメリカによる
水爆実験で死の灰を浴びた漁船だ。

ビキニ核実験と言えばこの第五福竜丸なのだが、それ以外にも延べ
1000隻の漁船が被災していた。

このビキニ核実験について、高知の高校生グループが独自に調査を
していた。後の世代に受け継がれて30年続いた調査に、教員として
携わったのが本書の著者である。

実験海域の近くで操業していた漁船は、苦労して水揚げしたマグロを
廃棄させられ、直後から多くの漁船員が原因不明の体調不良に悩ま
される。

しかし、日本政府や漁業関係者が心配したのは漁船員たちの健康
被害ではなく、汚染マグロだった。

アメリカが先導する原子力の平和利用というお題目に、日本政府を
追随する。

広島・長崎への原爆投下の賠償請求を放棄したように、ビキニ水爆
実験でも日本政府はアメリカへの賠償責任を放棄した。アメリカから
「見舞金」という名目で7億2千万円を引き出しただけで。

船員保険も適用されず、次々に船員仲間が急死して行く不安は
いかばかりか。多くの船員たちの被爆をなかったことにし、日本は
この後、原発列島へと突き進んで行く。

高知の高校生たちの地道な調査が、口の重かった元船員たちから
貴重な証言を引き出しているのが興味深い。

原子力発電所を作りたい。だから、水爆実験の犠牲には目をつぶろう。
この時、船員たちの追跡調査をきちんとしておけば、福島第一原発
事故の参考になったんじゃないか。

被爆し何の補償もされず、多くの船員が亡くなっていった。彼らは
モルモットじゃないんだぞ。