独裁者の密使となった文学者

「どうして2000万円報告書を受け取らない? 子供みたいな
真似はやめなさいよ」

党首討論会で安倍捏造君にこの質問を投げつけた記者さん、
どこの社の人だったろう。

『絆と権力 ガルシア=マルケスカストロ』(アンヘル
エステバン/ステファニー・バニチェリ 新潮社)読了。

ノンフィクションというより研究書に近いと感じるから、文章が
いささか硬いのは仕方ないと思う。

しかし、原書(スペイン語?)からの翻訳なのか、英語版からの
翻訳なのか不明だが、訳文がどうしようもなく読みずらい。直訳
しちゃったのかなぁ。もう少し文章の流れを考えて日本語訳に
してくれればよかったのに。

興味深いテーマではあるのだ。ノーベル賞受賞作家のガルシア=
マルケスと、キューバ革命の立役者でありキューバの指導者で
あるフィデル・カストロの間に結ばれた友情を、関係者への
インタビューや多くの文献を基礎にして辿っている。

それだけに日本語訳が読ませる訳になっていないのが残念だ。

原書の著者ふたりはカストロキューバにかなり批判的。
そうだろうなとは思うのよ。アメリカの傀儡政権を倒した
とは言え、カストロだって他の独裁者たち同様に思想・
言論統制を行ったのだもの。

そのカストロによる思想・言論統制を擁護したのがマルケス
マルケスの中には幼い頃に祖父母から聞かされ続けた軍事指導者
への憧憬がずっとあったのだと思う。

その憧憬を反映させた人物がカストロだったのかもしれない。
もし、文学者になっていなければマルケスは南米の政治に関わり、
カストロとの友情を築く以前に命を落としていた可能性もあるので
はないのかなぁ。

百年の孤独』をはじめ、マルケスの作品はいくつか読んだが、
彼の政治大好きぶりを知って作品を読み直すと読後感も変わる
かもしれない。

カストロについてはかなり否定的な内容の本書ではあるが、
マルケスノーベル賞授与式に出席した時に、キューバ産の
ラム酒1,500本をスウェーデンに送ったエピソードは楽しかった。

 

絆と権力―ガルシア=マルケスとカストロ

絆と権力―ガルシア=マルケスとカストロ