カリフォルニアでクサヤの干物を食べる

地元駅前に「聖火リレーが来るよ~」みたいな横断幕が
掲げられていた。

来なくていいんですけど。

『ストロベリー・ロード』(石川好 七つ森書館)読了。

『ストロベリー・デイズ 日系アメリカ人強制収容の記憶』
(デヴィッド・A・ナイワート みすず書房)は、太平洋戦争
以前に新天地を求めアメリカに渡り、戦中は敵性外国人として
強制集所に押し込められ、辛酸を舐めた日本人・日系人の足跡
を追った良書だった。

敗戦、連合軍による日本占領、戦後復興を経た1965年。高校を
卒業したばかりの著者は、農業移民として先にアメリカに渡って
いた兄を頼って故郷・伊豆大島を後にし、カリフォルニアの土を
踏んだ体験をまとめた書である。

やっぱりイチゴ畑なのである。『ストロベリー・デイズ』でも
日本人・日系人の作るイチゴは大粒で甘いと記されていたが、
戦争を挟んでも農業移民はイチゴ作りを続けていたんだのか。

カリフォルニア州自体が農業州なので、いろんな農作物を栽培
していたのだろうが、著者が頼った兄が働いていた農場がイチゴ
作りをしていたことが、私には戦前からの日本人移民の継承の
ように思えた。

ハイスクールに通いながら、兄の仕事の手伝いし、収穫期には
イチゴ摘みの為に密入国して来るメキシコ人たちに囲まれた
生活は日本でいた頃に憧れた「豊かなアメリカ」とは程遠い
現実を著者に突き付ける。

汗と泥にまみれた日々。その日々のなかで体験する日系移民の
社会を通して、著者はアメリカとアメリカ人について考察する。
この考察がなかなか興味深い。

60年代後半のアメリカは公民権運動やヴェトナム戦争などで
揺れに揺れていた。著者もその一端に触れている。

こう書いてしまうと小難しい内容かと思われるが、決してそうでは
ない。ハイスクール時代の、失敗に終わった白人少女とのデート、
トニー谷ルー大柴かと感じるくらいに英語交じりの奇妙な日本語
を話す日系人に囲まれた暮らし、サンフランシスコで偶然に出会っ
た日本人女性に抱いた恋心を通り越した下心。

それらが軽妙な筆致で描かれている。それにしても…だ。シスコで
出会った女性に会う口実に故郷から送られて来たクサヤの干物持参
を持参するってどうなの?匂いがもれるでしょうに。

アメリカと何か、日本人移民とはなにかを考える参考になる1冊だ。
尚、本書は1989年の大宅壮一ノンフィクション賞を受賞している。

 

ストロベリー・ロード (ノンフィクション・シリーズ“人間”)