書を掴み、戦場へ出よ

安倍総理は先ほど軍用機や航空機、それに農産物など数十億ドル
に上る米国製品を購入すると約束した」

日米首脳会談後の会見で、アメリカ・トランプ大統領に暴露されて
るじゃないか、安倍晋三

アメリカへ何をしに行ったのかと思ったら、貢ぎに行っただけじゃ
ないか。

『戦地の図書館 海を越えた一億四千万冊』(モリー・グプティル・
マニング 東京創元社)読了。

ドイツ的ではないことを理由に、ナチス・ドイツは大量の書籍を
焚書にした。

禁書・焚書などと聞いたら、読書好きはそれだけで憤死してしま
いそうだ。なんてことをしてくれたんだ。本に罪はないだろう。

だが、戦争は思想の戦いでもある。思想を検閲したナチス・ドイツ
に対し、アメリカは戦地の兵士が自由に本を読めるようにと、これ
また大量の書籍を前線へ、基地へ、艦船へ、輸送船へと送り出した。

「兵士に本を届けよう」。最初は国民へ呼びかけ、書籍の寄付を募った。
それが大きな運動となり、戦時図書審議会が創設され、出版社、印刷
会社をも巻き込んで兵士たちのポケットに収まる軽量化された小型版
の書籍「兵隊文庫」が作られるようになった。

輸送船の中で、塹壕で、野戦病院のベッドの上で。兵士たちは本を
貪るように読んだ。それは唯一の娯楽だったから。軍隊に入るまで
読書の習慣がなかった者でも、兵隊文庫には夢中になった。

そして、少なくない兵士の復員後の生活に、戦争中に読んだ本が
影響を与えている。

過酷な戦場で、兵士たちは兵隊文庫に安らぎを、慰めを、本国と
の繋がりを感じていたんだろうな。読書好きとして嬉しく思うし、
このような「もう一つの戦争史」を発掘してくれ、作品として
まとめてくれた著者に感謝したい。

この兵隊文庫は日本の出版史にも大きな影響を与えている。進駐軍
日本に持ち込んだ兵隊文庫を入手した出版社などが翻訳版を発行して
いるのだ。

「私たちは皆、本が燃えることを知っている──しかし、燃えても
本の命は絶えないということも良く知っている。人間の命は絶えるが、
本は永久に生き続ける。いかなる人間もいかなる力も、記憶を消す
ことはできない。いかなる人間もいかなる力も、思想を強制収容所
に閉じ込めることはできない。いかなる人間もいかなる力も、あら
ゆる圧政に対する人間の果てしなき戦いとともにある本を、この世
から抹殺できない。私たちは、この戦いにおける武器は本である
ことを知っている。」

兵士に書籍を送ることに賛意を示したルーズヴェルト大統領の
声明だ。

そう、本は永遠に生きる。ナチス・ドイツ焚書にした作品さえ、
兵隊文庫で復活し、それを携えた兵士たちがヨーロッパ戦線に
向かったのだから。

巻末には発行された兵隊文庫の一覧が掲載されている。翻訳大国
日本であるが、翻訳書が出ていない作品が多いのが残念だ。