相手は同じ人間なんだ

1票の格差の是正ねぇ。それよりも議員定数削減はどうしたの?
消費増税と引き換えで実行するはずじゃなかったのかなぁ。

なにをしているか分からないセンセイ、いっぱいいるでしょう。
見直し前の新国立競技場の膨大な建設費で、選手の強化費用
が削られるかも…って危機の時にな〜〜んも声を上げなかった
元女性柔道家とかさ。

無駄な歳費の削減につながると思うのだが、いつやるのかね?

『ソンミ ミライ第四地区における虐殺とその波紋』(セイムア・
ハーシュ 草思社)読了。

1890年12月28日。スー族の居留地であるサウスダコタ州ウンデット・
ニーで、アメリカ第7騎兵隊は、スー族の老人や女性、子供を虐殺
した。

時が経ち、時代はヴェトナム戦争時。1968年3月16日、南ヴェトナム
に展開してたアメリカのとある歩兵部隊が、武器を持たぬヴェトナム
の民間人ばかりの村で無差別殺戮を行った。

ソンミ村事件は、後々、アメリカでの反戦運動が盛り上がるきっかけ
ともなった事件だった。

事件はどのように起こったのか。何故、1年近くも経ってから告発され
たのか。アメリカ政府と陸軍上層部は、事件の発覚後、どのように
対処しようとしたのか。

今ではベテラン中のベテランの調査報道記者となった著者の名を
知らしめることになったのが本書だ。訳者はべ平連の小田実。あ、
べ平連って言っても今では知らない人が多いのかな。

虐殺の描写は眉をひそめるだけでは済まない。戦争という極限状態、
しかも相手はゲリラ戦を仕掛けるベトコン。殺すか、殺されるかの
世界にいたことを割り引いても、同じ「人間」に対して行われたこと
なんだと思うと気分が悪くなる。

民間人の負傷者がいる。手当てが必要だと思ったヘリコプターの乗員が、
場所が分かるようマーキングすればその場所へ現れた兵士が撃ち殺して
しまう。例え、それが子供であってもだ。

命を救うはずだった印が、「ここに殺すべきヴェトナム人がいる」の印に
なってしまうなんて。

僧侶さえも見逃されることはなく、女性ならば暴行された上に殺害された。
家畜も殺され、粗末な小屋は焼き払われ、村落は徹底的に壊滅した。

300人とも500人とも言われる被害者だが、当初は敵との大規模な戦闘
が行われたと報告された。

しかし、除隊後に良心の呵責に耐えかねて告発に踏み切った元兵士
がいた。そこから事件当時の調査が始まるのだが、政府の一部と軍の
上層部はいかに事件を小さく見せるかに汲々とする。

アメリカがヴェトナムでの戦争に参戦する前、そこにはフランスが宗主国
として君臨していた。フランス人はヴェトナムに来てヴェトナム語を覚えよう
としたが、アメリカ人はヴェトナムに来て英語を話すよう強要したというの
をどこかで読んだ。

フランスがヴェトナムで酷いことをしなかったとは言わない。だが、ゲリラ
への恐怖と共に、アメリカ軍にはヴェトナムとヴェトナム人に対する差別
意識がはっきりとあったのではないか。

兵士たちも犠牲者とは思う。しかし、極限状態にあっても相手を人間と
認識し、尊厳を守ろことはしなくてはいけないのではないだろうか。

40年以上前の作品だが、今でも色褪せないピュリツァー賞受賞作だ。