一橋文哉史上、最強の駄作

「私が真実を知りたいって、本当に思います。何にも関わって
いないんです」

そう思うなら、国会の場に出て来てはどうでしょうね。安倍昭恵さん。

『「赤報隊」の正体 朝日新聞阪神支局襲撃事件』(一橋文哉 新潮社)
読了。

都合よく事件の核心を知る人物と接触出来たり、真犯人に辿り着いたり、
事件の裏側では「闇の紳士」が暗躍しているのが一橋文哉の作品の
パターンなんだ。

読む前から「どうせ今回も似たような作品なんだろう」と思っていたが、
やっぱり本書もまるっきり同じパターンだった。

1月27日・28日とNHKスペシャルの「未解決事件」シリーズが1987年
5月3日に起こった朝日新聞阪神支局襲撃事件を取り上げたので、買った
まま積読本に埋もれていた本書を引っ張り出して来たのだ。

内容が酷すぎる。雑誌「新潮45」に本書の元になった記事が掲載された
のは2000年なので、一連の赤報隊関連事件の時効前なのに捜査関係者や
捜査幹部がべらべらとよくしゃべること。しかも、事件に核心に迫る
であろうことばかり。

いや〜、凄い取材力だね。本当なら…だけど。

そして、著者はなんとっ!阪神支局襲撃事件の実行犯に辿り着き、本人に
インタビューもしているのだっ!

本書によると阪神支局が襲われたのは、この事件で亡くなった小尻記者が
取材していたことが原因であったらしい。

でもさ、あの襲撃事件で最初に撃たれたのは犬飼記者なんだよな。小尻記者
の命を奪ったのは2発目の銃弾だったんだけどな…と思っていたら、実は
犬飼記者も同じ件に絡んでいたなんて後出ししやがった。

しかもこの実行犯、実に都合よく病気で急死している。ねぇねぇ、本当に
実在した人物なの?妄想の産物じゃないの?

1億歩譲って本書が示す人物が実行犯だとしよう。だとしたら、事件当日に
小尻・犬飼の両記者が支局にいるって確実に把握してないと襲撃できない
よね?その辺りには触れていないのだが。

途中、同じ著者の他の作品同様、平和相互銀行事件やらイトマン事件やら
の話がだらだらと続くので、もうお腹いっぱい。

やっぱりこの著者(著者グループ?)の作品はもういいわ。赤報隊の正体
より、この覆面作家が正体を晒して「妄想をノンフィクションと言って
ました」と宣言してくれる方がいいわ。

尚、朝日新聞阪神支局襲撃事件については事件後に支局内に設けられた
特別取材班に在籍した元記者の作品が2月に発売になるようなので、そち
らに期待したい。