罪の意識は芽生えたのだろうか

『19歳 一家四人惨殺犯の告白』(長瀬隼介 角川文庫)
読了。

2017年12月19日、東京拘置所でふたりの死刑囚に対して
刑が執行された。そのうちのひとりが関光彦。犯行当時19歳
だった関に対しての刑執行は、永山則夫以降20年振りだった。

俗にいう「市川市一家4人殺人事件」が発生したのは1992年
3月5日の夕方から翌朝にかけてだ。金銭目的で事件発生1カ月
前に暴行した少女の家に侵入し、わずか4歳であった少女の妹
までをその刃にかけた胸糞悪い事件である。

そんな惨劇を引き起こした少年犯は、どのような生い立ちなのか
を追い、自身が起こした事件に対して何を感じているのかを文通
と面会によって辿ったのが本書である。

父親による家庭内暴力、その父親が作った借金による両親の離婚と
夜逃げ、世間体を憚る母親、安息を得られる場所は母方の祖父母の
の元にいる時だけだった。

 

19歳 一家四人惨殺犯の告白 (角川文庫)

19歳 一家四人惨殺犯の告白 (角川文庫)

 

 



そんな生活が徐々にいびつな性格を育んだのかもしれないが、生い
立ちだけでは片づけられない、本人の資質もあるのではないかと
感じる。

市川市での犯行に及ぶ前にも、関はいくつかの犯罪に手を染めている。
その動機さえも曖昧だ。ただ力で人を支配したいだけだったのではない
のだろうか。父親が暴力で家族を支配したように。

その力のほとんどは自分より弱い者にだけ向けられている。事件の引き金
となった女性とのトラブルで暴力団に脅されれば、半ばパニックになって
いるのだから。

書簡の内容、面会時の会話から、自分に何の関りもない4人の命を奪った
罪の重みを、彼は感じていなかったのではないかと思わせる部分が多々
ある。

本書は2000年に単行本で発行されたものに1章が加筆されて文庫化され
た作品なので、著者が係わった頃の関のままで絞首台に上がったのでは
ないことを祈りたい。