ウサマ・ビンラディンは一人じゃない

早朝の駅のホーム。空はまだ暗い。電車待ちの間に本を読んでいた
ら、視界を隅を何かがかすめる。

視線を上げると白いものがチラチラ。初雪である。積りはしなかったけど、
どうりで寒いはず。

この冬は今までが暖かったから余計に寒く感じたんだろうな。今週はずっと
こんな寒さなのかな。

ビンラディン アメリカに宣戦布告した男』(ヨセフ・ボダンスキー
 毎日新聞社)読了。

イスラム過激派アルカイダの司令官であり、9.11アメリ同時多発テロ
首謀者。FBIの最重要指名手配者でもあったウサマ・ビンラディン

9.11以降、アメリカが血眼になって探し回っていたビンラディンは2011年の
5月、パキスタンの隠れ家を急襲したネイビー・シールズによって暗殺され
た。

本書の日本語訳は9.11直後に出版されたが、アメリカではそれ以前に
出版されている。

タイトルにビンラディンの名前が入っており、彼の活動を中心に話は進む
のだが全体として見るとイスラム過激派がいかにして生み出されたかと、
彼らが持つ豊富な資金源とそのネットワークについてを詳細に綴っている。

やっぱりパキスタンなのだ。この国が重要なカギを握っている。アメリカ政府
はテロを行う組織に対して資金や武器を提供している国を「テロ支援国家
と指定しるが、パキスタンは過去にも指定されたことはない。

でも、完璧にタリバンアルカイダを支援してるんだよな。ビンラディン
隠れていたのもパキスタン国内だしさ。

遡ればソ連のアフガン侵攻だ。ソ連相手に戦う為にイスラム世界の各地から
アフガニスタン入りしたムシャヒディン(イスラム聖戦士)の訓練キャンプを提供
した時から、パキスタンは深くかかわることになったのだろうな。

そして、ソ連が撤退して後、アフガニスタンから各自の国に戻った「アフガン兵」
たちが、新たにネットワークを築いて行く。

だから、ビンラディンひとりがイスラム過激派を作り、指導して来たのではない。
それぞれの組織が複雑に絡み合っている。資金や武器の供与についても
CIAがかかわっていたりするのだもの。

著者はイスラム過激派の専門家だけあって、各組織や国の動きを綿密に
記述している。これが9.11前にアメリカで出版されていることに驚く。ここま
で分かっていても、旅客機がワールドトレードセンターに突っ込んで炎上・
崩壊するのは阻止できなかったのだもの。

ビンラディンは暗殺された。テロ事件の容疑者なのに裁判もなく殺された。
彼一人を殺害したからと言って、テロの脅威がなくなった訳ではない。
その証拠に、アメリカは、否、世界は現在でもテロの脅威に晒されている。

ビンラディン」は次から次に出現して来ているのではないか。