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マスード 伝説のアフガン司令官の素顔』(マルセラ・グラッド
 アニカ)読了。

大学在学中にアフガニスタン共産主義政権が誕生し、ソ連の侵攻が
始まった。祖国の独立を守る為、大学在学中だった青年は抵抗運動に
身を投じる。

そうして彼は優れた指導者となり、死後には「アフガニスタン国家
英雄」の称号を与えられた。

強大な軍事力を誇るソ連軍も、一時はアフガニスタンの90%を掌握した
タリバンも、どうしても落とせない地域があった。

パンジシール渓谷。そこは「パンジシールの獅子」と呼ばれたアフマド・
シャー・マスードが本拠とした生まれ故郷だ。

日本語で書かれたマスードに関する作品で入手できるのは、長くマスード
を取材した日本人カメラマン長倉洋海氏によるものがほとんど。なので、
海外で出版されたマスード関連の作品の日本語訳はとっても嬉しい。

でも、本書は客観的視点に立ったマスードの評伝ではない。マスード
華族、共に闘ったムシャヒディン、研究者、海外からマスードを支援し
た亡命アフガン人、取材をきっかけにマスードに魅せられた欧米の
ジャーナリスト等々へのインタビューからマスードはいかなる人物だっ
たのかを描いている。

著者をはじめ、本書に登場する人々は軒並みマスードにひとかたならぬ
思い入れを持っているので内容は最大のマスード礼賛だ。ただ、それを
批判することは私には出来ない。だって、マスードは私の英雄のひとり
でもあるのだもの。

アフガニスタンで抵抗運動を指揮した司令官の多くが、近隣諸国から指示
を出していたのにマスードは国内に留まり、ムシャヒディンたちと行動を
共にし、権力や金銭への執着も持たなかった。

ソ連戦のさなか、マスード軍の捕虜となったソ連兵は解放されたのに
も係わらず、自ら改宗し、金髪だった髪を染め、ムシャヒディンとなり、
マスードの護衛を務めるまでになった。

捕虜への虐待を許さず、不正を働いた自軍の指揮官には厳しい叱責を
与え、女性が医療を受けられるようにパンジシールへ女医を招き、女性
への教育の大切さを理解し、民族・性別・宗教を理由にした差別があって
はならないと説く。

詩を愛し、寝る間を惜しんで読書にいそしみ、敬虔なイスラム教徒として
どのような環境にあっても1日5回のお祈りは欠かさない。戦闘の合間に
も行く先々の村で子供たちと戯れ、彼ら・彼女らの未来を見据え、学校
建設にも尽力する。

あぁ…やられるよね。本書に記されているマスードの人物像に、更に
心を鷲掴みにされるわ。

「もしブッシュ大統領に一言申し上げられるのであれば、こう言いたい。
アフガニスタンで起きている問題をないがしろにすると、アフガニスタン
だけでなくアメリカ国民も被害を受けることになる」

世界がパキスタンタリバン支援に反対するよう訴える記者会見で、
マスードは言っていた。だが、国際社会はマスードの言葉を真剣に
受け止めることをしなかった。

そうして、9.11アメリ同時多発テロが発生する2日前、ジャーナリスト
を装った自爆テロによって、戦乱後のアフガニスタンを背負って立つはず
だったマスードは爆殺された。

今の日本ではアフガニスタン情勢の報道はほとんどなされない。それでも、
時折ニュースでアフガニスタンの現状が伝えられるとマスードが生きてい
れば…と思うことが多々ある。

祖国が平和になったら国のことは政治家に任せて、建築の勉強に戻りたいと
口にしていたマスード。願い叶わず48歳で神の国へと旅立った。

イスラム教では偶像崇拝を禁じているのは理解している。でも、マスード
はやっぱり私のなかの英雄であることに変わりはない。

世界中に散らばっているマスード礼賛者。その末席に私も連なりたい。