この世でもっとも尊いものは、自由と独立である

なんの進展もない、イスラム国による邦人殺害予告。ネット上では
拘束されている人の親を揶揄したり、イスラム国が公開した映像を
コラージュしていたり、「自己責任」という言葉が溢れている。

自己責任でなんでも括ってしまうのは簡単だけどね。言っている
人たちは、自分に降りかかることは全部「自己責任」ってこと
でいいんだよね。

ところで、日本版NSCって何をしているの?機能していなんじゃ
ないのかね?

ハノイサイゴン物語』(ニール・シーハン 集英社)読了。

ヴェトナム戦争時、アメリカの謀略と言われる「トンキン湾事件
に関するアメリカ政府の極秘文書の存在をすっぱ抜いたのが、
本書の著者であるニール・シーハンである。

自身、記者としてヴェトナム戦争に従軍し、そのなかで出会った
アメリカ陸軍中佐ジョン・ポール・ヴァンを中心にして16年の
歳月をかけて書き上げたのがピュリツァー賞受賞作『輝ける嘘』。

そのニール・シーハンが、民族の独立を勝ち取り、統一国家
なったヴェトナムを再訪したルポルタージュが本書である。

アメリカ軍の従軍記者だった為に、当時は立ち入ることが出来な
かった北部ヴェトナムを初めて訪れ、政府軍とアメリカ軍が破壊
し尽した土地の再生を見、南部ヴェトナムでは戦後の「再教育」
を終えた顔見知りだった元政府軍将軍の話を聞く。

第2次世界大戦後、アメリカが介入した戦争で唯一アメリカ軍を
追い出したのがヴェトナムだと思っている。朝鮮半島は38度線
で分断され、正確には「休戦中」。

「ブラック・ホーク・ダウン」のソマリアは今では国家としては
崩壊しているも同然。アフガニスタンイラクは治安が安定せず、
未だにテロが頻発している。

これは、アメリカが滅茶苦茶にした、ひとつの国の再生の物語だ。
ナパーム弾が、黄燐が、雨のように降り注ぎ、枯葉剤は肥沃な
大地を死の大地にした。

アメリカ軍の撤退、サイゴン政権の崩壊、そしてサイゴン陥落。
しかし、戦後も決して順調だった訳ではない。アメリカからの
経済制裁に苦しみ、中国の圧力と闘うヴェトナムは、フィンランド
スウェーデンの支援を受け、病院や学校の再建に取り組む。

腐敗したサイゴンの政府軍のなかでも気概のある将軍もいた。
彼が語る戦後の再教育の体験は、同じ民族でありながら敗者
となった者の苦しみと悲しさを感じさせると同時に、最後まで
逃げることのなかった軍人の矜持を教えてくれる。

「この世でもっとも尊いものは、自由と独立である」。ホー・
チ・ミンの霊廟に記された言葉だ。多くの犠牲を払いながらも、
ヴェトナムは長い時間をかけて、このふたつを勝ち取ったのだね。

尚、ヴェトナム戦争に従軍したアメリカ兵たちの有志によって、
ヴェトナムの戦後を支援する取り組みがあったことも忘れて
はならないね。