遅すぎた帰還

1974年フィリピンのルバング島からひとりの日本人が帰国した。
小野田寛郎。旧日本軍の陸軍少尉だ。

その小野田さんが亡くなった。91歳。大往生と言っていいのだろう。

終戦を迎えても任務解除の命令が届かなかった為、活動を続ける
為に数人で山中にこもった。数人いた仲間は次々と死亡し、小野田
さんだけが残った。

日本の敗戦及び戦後の復興はラジオなどで知っていたが、アメリ
軍の謀略であるとして信じようとはしなかった。

日本政府も小野田さんの存在は分かっていて、何度か捜索隊を
派遣したが接触できず。1974年になって探検家が接触に成功。

上官にあたる元少佐の任務終了と武装解除の命令を受けて、
やっと山を下りて来た。時に終戦から29年後だった。

当時のニュース映像を覚えている。祖母が画面に向かって手を
合わせていたっけ。

やっと帰って来た祖国。だが、マスコミの過剰報道や批判に
さらされ続け、祖国は生きづらい場所になってしまった。

ブラジルに移住し、牧場経営で成功し。晩年はブラジルと日本を
行き来していたという。

小野田さん、あなたの91年間の人生は激動でしたね。どうか
安らかにお眠り下さい。ご冥福を祈る。合掌。

『友だち地獄──「空気を読む」世代のサバイバル』(土井隆義
 ちくま新書)を読み始める。

繊細な優しさ。それが若い世代を生きにくくさせている。いじめ、
リストカット。その背景にあるものを探る。