熱帯雨林の奥深くの人間たち

今日は皇后陛下の80歳のお誕生日である。それなのに、安倍内閣
閣僚のW辞任でニュースが飛んだ。

くっそ〜。夕方から夜のニュースを楽しみにしていたのに、なんて
ことをしてくれるんだ。この二人の元閣僚、一生恨んでやるっ!

皇后陛下、お誕生日おめでとうございます。天皇陛下と共に、
長生きなさって頂きたいと切に願います。

『ヤノマミ』(国分拓 新潮文庫)読了。

昔々、遥かな昔。アフリカ大陸で誕生した人類は、長い年月を
かけて世界各地へと散らばった。ある者はヨーロッパへ、ある
者はアジアへ。

そして、ある者は凍りついたベーリング海峡を渡り北米大陸
縦断し、南米大陸へ辿り着いた。そこを定住の地と決め、森と
川に囲まれて、自然と精霊と共に生活を始めた。

アマゾンの熱帯雨林の奥深く、先住民のヤノマミ族が暮らしている。
彼らの言葉で「人間」を意味するヤノマミの、ワトリキと言う集落
で通算150日間を同居したドキュメンタリーが本書である。

元々はNHKスペシャルで放送された密着ドキュメントで、放送当時
に観た記憶がある。

日の出と共に起き、日の入りと共に眠る。時間は太陽の傾く角度
で計り、必要以上の狩りはしない。シャーマンがおり、祭りが
あり、そして一部のものは「文明」と出会い、受容する。

テレビ放送でもそうだったが、本書でも衝撃的だったのは出産の
話だ。

子供は精霊としてこの世に生まれて来る。精霊のまま天に送るか、
人間の子供として腕に抱くか。決めるのは母親ひとりだ。著者
と取材に同行したカメラマンは精霊として天に送る場面を目撃
する。

母親が我が手で、生まれたばかりの我が子を殺める場面をだ。
「残酷」と言ってしまうのは簡単だ。だが、私たち文明の側に
いる人間が出生前診断で間引くのと、どこが違うのだろうか。

住居を転々と変えながら独自の風習や習慣を守って生きて来た
ヤノマミ。しかし、近年はブラジル政府が行う先住民保護プロ
グラムによって都市に留学し、ポルトガル語を覚え、以前の
ヤノマミの生活になかった様々な「モノ」をお土産として
持ち帰る者も増えた。

文明と接触することで、ヤノマミとしての生活を捨てるか。
文明を知って、ヤノマミの生活の方がいいと思うのか。

他者が判断することではないのだろう。だが、ヤノマミが文明
を受け入れ都市で生活するようになれば、資源の宝庫でもある
アマゾンの土地を開発できる。その機会を狙っている人間も
いるのではないかと思ってしまった。

尚、本書の中で著者たちが集落を離れる時期にヤノマミに
乞われて歌を歌ったというエピソードがある。著者が歌った
日本の童謡には無反応だったヤノマミたちだが、カメラマンが
歌った「島唄」には何度もリクエストが出た。

同じモンゴロイドのヤノマミたちが、沖縄の旋律に反応する
のは自分たちのなかにあるリズムに近いものがあったのだろうか。

世界中から先住民が姿を消して行く。ヤノマミたちも、あと
何年、何十年経ったら地上から姿を消してしまうのだろうか。