悲劇はコロンブスが連れて来た

『わが魂を聖地に埋めよ 上』(ディー・ブラウン 草思社文庫)読了。

アメリカが光り輝く黄金のフロンティア開拓史だが、それは白人の
視点に立ったからこその栄光の歴史なのだ。

本書はフロンティア開拓史の陰に葬られたアメリカ・インディアンの
側から書かれたアメリカ史である。

絶版になっており何年か古書店で探していたのだが、この度、文庫
になって復刊した。

すべてはクリストファー・コロンブスが、新大陸にその1歩を刻んだ
時から始まっていた。新大陸でコロンブス一行を迎えた赤い肌の
人々は、ヨーロッパ人たちに贈り物を捧げ、丁重にもてなした。

友好的な態度で接したインディアンたちに対して、あろうことか
コロンブスは何人かを誘拐し、スペインに奴隷として連れ帰った。

そうして新大陸では続々とヨーロッパから渡って来た人々が、
インディアンの土地を荒らし回り、彼らの村を焼き払った。

勿論、すべてのヨーロッパ人がそうだった訳ではない。一部の
人々はインディアンたちの助けがなければ餓死を免れなかった。

しかし、インディアンたちとの平和は長くは続かない。旧大陸から
の移民が陸続と押し寄せた新大陸では、白人たちはインディアン
の土地を占領し、誰のものでもなかった土地に囲いを作り、
インディアンたちが自然と共に暮らして来た生活を脅かす。

南北戦争奴隷解放の為に闘った将軍や兵士たちさえも、
相手がインディアンになると「同じ人間」としては扱わない
ことが衝撃だ。多くの犠牲の上に成立した公民権法でさえ、
インディアンたちは除外されている。

インディアンたちを「野蛮人」と呼ぶ白人たちは、降伏の白旗を
掲げる酋長を銃で狙い、女性や子供だけの村を襲って虐殺する。
ただ殺すだけではない。遺体には凌辱が加えられている。

白人の言うことを信じ、平和条約に署名し、穏やかに暮らしたいと
願ったインディアンと、そのインディアンを騙し打ちする白人と。
野蛮なのはどっちなんだ。

上巻に描かれた各部族の悲惨な歴史だけでも圧巻。下巻を考え
ると更に辛いな。