白い侵略者たちのジェノサイド

「ここはインディアンたちの土地。白人移住者には立ち入らせない」

アメリカ・インディアンが「グレート・ファザー」と呼ぶアメリカ大統領は
条約を交わした。

しかし、インディアンたちの聖なる山で鉱物資源が発見されると
鉱山師が大挙して押し寄せる。政府は鉱山師を追い出すどころか、
インディアンたちとの条約を反故にし、彼らに移住を強いる。

「白人は嘘ばかりつく」。その通りなのだ。インディアンの管理に
当たった下っ端役人ではない。大統領その人が、インディアン
との条約などなかったかのように、彼らが生まれ育った環境を
無視し、まるっきり環境の異なる地への強制移住をささえようと
する。

それは、西部劇で描かれるような勧善懲悪などではない。嘘を
吐き、言いくるめ、恫喝し、武力をちらつかせるアメリカの、否、
白人社会の悪しきなのかもしれない。

野牛を追い、馬に草を食ませ、インディアンたちが駆け回った
草原には大陸横断鉄道が走り、野牛は姿を消し、放牧場で
あった広大な土地には白人たちが家を建てる。

ならば、インディアンたちもその隣人として遇すればよかったので
はないか。だが、白い略奪者たちは彼らを居留地に押し込め、
すべての自由を奪った。

着る物も、食べる物も支給する。それさえも満足に与えられず、
飢えと病に苦しむインディアンたちが、自分たちの故郷を取り
戻そうと戦うのは当然のなりゆきだ。

白い侵略者たちはインディアンを「白人にしよう」とし、多くの血が
流された。アメリカ・フロンティア開拓使の裏側にあるのは、白人
によるアメリカ先住民へのジェノサイドにほかならない。

文明は持たなかったが文化を持っていたインディアンたち。彼らも
また、自分たちと同じ「人間」であるということに、白人たちは思い
至らなかったんだよな。

本書の端々に登場するインディアンたちの言葉が胸を打つ。
開拓史に隠されて虐殺されたアメリカ・インディアンたちの
魂が安らかでありますように。