汚染土を資源と言い換えるまやかし

東京オリンピックの会場への旭日旗持ち込みは問題ない」

こんなことを言う人がオリンピック担当大臣だよ。元スポーツ
選手でオリンピックにも出場しているからって、その地位に
ふさわしいとは限らないんだよね。ねぇ、橋本聖子さん。

あ、高橋大輔へのセクハラ問題がなかったっけ、この人。

『除染と国家 21世紀最悪の公共事業』(日野行介 集英社新書
読了。

福島第一原子力発電所の事故は、広範囲に放射能汚染をまき散らし、
普通の人たちの暮らしを奪った。なのに、事故からわずか8年しか
経っていないのに、「除染が済んだから」を理由に国も被災自治
も避難した人たちへの帰還を推奨している。

除染が行われ始めた頃から疑問ではあった。例えばチェルノブイリ
原子力発電所の事故。あの時、ソ連放射能汚染の高い地域の除染
は行わず、その地域を立ち入り禁止にした。

それが放射能に汚染された土地に対する、正しい判断なのだと思う。
だが、日本は巨額の税金を投じて汚染の高い地域でさえも除染を
行い、「ほら、事故直後よりこんなに放射線量が下がりましたよ。
さあ、故郷へ帰りましょう」とやった。

安心感の押し売りと、東京電力の賠償金をいかに低く抑えるか。
それしか考えていないのではないかを思える。住民の健康被害
なんて二の次、三の次なのではないだろうか。

そうして出た大量の汚染土をどうするのか。環境省は汚染土を
「資源」と呼び、公共事業にしようと目論んでいる。馬鹿なの?
環境省は環境を守るお役所ではなく、環境を破壊するお役所なの?

本書では除染で出た汚染土の仮置き場の問題、膨大な汚染土を
どうするかの環境省の非公開会議を追った、見事なルポである。

除染に関しては朝日新聞が手抜き除染をすっぱ抜いたが、本書の
著者の粘り強い取材も除染とその後の問題を明らかにしていて
興味深い。

思い出したのだけれど、環境省は以前、汚染土をレンガにして
建設に利用するなんてことも言っていたはず。日本宣告をまん
べんなく汚染したいのか、このお役所は。

汚染土は汚染土である。厳重に管理して、処分しなければならない
ものであるはずだ。それが「資源」であるはずがない。

フレコンバッグに詰められ福島県内に仮置きされている膨大な量の
汚染土。30年後には最終処施設に移動するはずだが、その約束さえ
守られるかは定かではない。

30年も経てば、「必ず他の場所へ移動させます」と約束した人たち
はその地位から去っているのだから。

本書で扱っているのは汚染土の問題だが、福島第一原発では溜まり続け
る汚染水の問題もある。こちらは最終的には希釈して海洋放出になるので
はないかと感じている。

前任の環境大臣が海洋放出を発言したことで、新たに環境大臣に就任し
小泉進次郎福島県を訪問し知事に詫びたようだが、彼は他の方法で
も持っているのだろうか。持っているのなら早急に表明して欲しいが、
中身が空っぽそうだから言うことだけは立派なのかな。

放射能汚染はなかったことにしないのが、日本政府のスタンスなのか。
それが風評被害を恐れる福島県の思惑と一致しているのかもしれない。

だが、数字や言葉を誤魔化しても事故をなかったことには出来ないと
思うし、なかったことにしてはいけないと思う。

関心を持ち続け、原発事故の「その後」を追っ行きたいのだが、いかん
せん、報道が少なすぎる。東京オリンピックで浮かれている場合じゃ
ないんだ。

 

除染と国家 21世紀最悪の公共事業 (集英社新書)

除染と国家 21世紀最悪の公共事業 (集英社新書)