どんなものでも秘密にしておくと堕落する、正義の運用でさえも

17年振りの宮中祭祀なぁ。皇太子妃時代がほぼすっぽりと
抜け落ちてるってことだよな。

「祈ることに意義が見出せない」とか言っていたお方だから
仕方ないか。

ブラック・スキャンダル』(ディック・レイア/ジェラード・
オニール 角川文庫)読了。

2018年10月30日の早朝、アメリカ・米ウェストバージニア州
ヘーゼルトン連邦刑務所内で、ある囚人が死亡しているのが発見
された。

ジェームズ・”ホワイティ”・バルジャー、89歳。FBIの十大指名手配
犯に名を連ねたボストンのアイルランド系ギャングのボス。16年間の
逃亡の末に逮捕され、恐喝・麻薬取引。殺人などの罪状で2回の終身刑
と懲役5年の判決を受けて服役中だった。

発見された遺体は顔が判別できないほど殴打され、眼球は抉り出され
ていた。バルジャーを殺害したのは、2人の囚人だと言う。

ギャングのボスだったとはいえ、高齢の受刑者が何故、暴行の末に
殺害されたのか。それは彼が「密告者」であったから。

バルジャーとFBIボストン支局の20年以上に渡る「ただならぬ関係」
を追ったのが本書だ。

イタリア系マフィアの撲滅にFBIが重い腰を上げた頃、ボストン支局
にはバルジャーと同じサウス・ボストンで育ち、幼い時からバルジャー
と顔見知りだったジョン・コノリーが在籍していた。

手柄を上げたいコノリーと、ライバルであるイタリア系マフィアの
勢力を殺ぎたいバルジャー。ふたりの野望が合致した。そして、そ
こからFBIボストン支局の腐敗が始まった。

コノリーは上司や部下まで巻き込んで密告者であるバルジャーの
保護者となる。しかし、バルジャーは必ずしも有力な密告者では
なかった。それどころか、コノリーたちが自分を必要としている
ことを逆手にとって、ライバルの殺人までをも犯している。

「毒を食らわば皿まで」なのか。コノリーは市警察・州警察や
麻薬取締局の捜査がバルジャーに及びそうになると情報を与え、
証拠隠滅・逃亡の手助けをしている。

何度も捜査線上に名前が上がりながら、すんでのところで手の中
から逃げて行くバルジャー。FBI以外の捜査機関の労力を考える
と気の毒でならない。

捜査機関だけではない。バルジャーからの恐喝に脅え、救ってくれ
るであろう捜査機関に駆け込んでも、その情報がバルジャーに筒抜け
になってしまい、一層に命の危険を感じるようになる。

嘘の上塗りを続け、コノリーはFBI内で出世を果たし、バルジャーは
イタリア系マフィアの弱体化に成功しボストンの裏社会の支配者と
なった。

しかし、嘘はいつしか表面化する。コノリーはFBIでの虚飾の実績を
引っ提げて民間会社の顧問となり、バルジャーも高齢になってから
それまでの悪事の数々で法廷に立つ羽目になった。

そうして、バルジャーの凄惨な死である。

本書ではバルジャーの死までは描かれていないが、ギャングと捜査
機関の癒着が引き起こした事件のえげつなさに戦慄する。

ただ、登場人物の多さとアメリカのノンフィクションにありがちな
綿密過ぎる描写、加えて日本語訳の硬さで読むのに若干苦労した。

別タイトルで発行された作品なのだが、2015年の映画公開に合わせ
タイトルを変えて発行された。映画ではバルジャーをジョニー・デップ
が演じており、予告編を見ただけでも悪さが伝わって来た。

だが、本物のバルジャーの方が底なしの悪である。

 

ブラック・スキャンダル (角川文庫)

ブラック・スキャンダル (角川文庫)

 

 

結局は失敗しちゃってる

youtubeNGワードが設定できるようにして欲しいわ。

フィギュアスケートの動画を見ると「あたへのおすすめ」に
視界に入れたくもない選手の動画が挙げられてるのだもの。

ソ連という実験 国家が管理する民主主義は可能か』
松戸清裕 筑摩選書)読了。

初代ツァーリ・イヴァン雷帝からロシア帝国最後の皇帝である
ニコライ二世まで。そして、レーニンからスターリン時代の
ソ連邦は一定程度の把握をしている。

しかし、フルシチョフ以降のソ連邦については私の中ですっぽり
と抜け落ちているのだ。

ロシア・ソ連史の空白地帯を埋めようと手にしたのが本書。なのだ
が、文章が硬すぎてなかなか噛み砕けなかった。

あらゆることを国家が管理し、国民はそれに従うだけ。社会党
政権に座に就いたら一切の自由はなくなると教わったのは小学生
の頃だった。

だが、実際、ソ連邦は国民の声に耳を傾け、生活と文化の向上を
目指してはいた。

目指してはいたが、実際に出来たかは別問題なのだけれどね。
どんなに上層部が国民からの声に対応しようとしても、選挙の
投票用紙は間違ったところへ配送され、インフラの老朽化は
手当されず、住居や物品は不足する。

そりゃ国家崩壊へまっしぐらですわ。

このソ連時代を教訓にしたのかな?プーチン閣下は。

プーチン閣下が国民からの質問に答えてくれる、ロシアで人気の
テレビ番組「プーチン・ホットライン」で、自治体が動いてくれ
ないことを訴える質問が寄せられると閣下の一声で事態は好転
しちゃうのだもの。

鶴の一声ならぬ、プーの一声である。

プーチン閣下のことは脇に置いて…。結局はソ連邦は国家として
失敗しているのだけれど、西側の民主主義が正解かと言えばそれ
も疑問符がつくと思うのだよね。

ソ連邦のみならず、世界中では壮大な実験が行われている最中なの
ではないかな。

パンデミックに備えよ

昨日の記事だが、BBCの東京特派員がなかなか興味深い
分析をしている。

興味のある方は下記から。
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-48101955

『検疫官 ウィルスを水際で食い止める女医の物語』(小林照幸
 角川文庫)読了。

「私は自分の人生を二十五年周期に区切っている。生まれてから
二十五年は自分のための二十五年だった。二十六歳からの二十五
年間は、家族のために使う二十五年だと思って生きて来た。医師
としての仕事は、自分のためでもあるけれど、家族を養っていく
ためのものでもある。でも、五十歳からの二十五年間は、医師の
仕事をそのまま社会に役立てることができると思っている。五十
を過ぎてからの二十五年は、私は社会のために使っていきたいと
思っているんだ」

耳鼻科医となり、結婚後に伴侶の仕事の関係でアメリカに渡り、
そこで出会ったポーランドアメリカ人の男性医師は有言実行
の人だった。

言葉通りに50歳で職を辞し、医療体制が不十分な南米に旅立った。

このポーランドアメリカ人医師の言葉は、医師として自分はどう
あるべきかを模索していた岩崎美恵子に強い印象として刻まれ、
日本初の女性検疫所長であり、感染症予防医学の第一人者を
誕生させるきっかけとなった。

医師としての仕事しながら3人の子供を育て上げ、50歳を過ぎ
てから専門外である感染症を学ぶ。本書は感染症予防に尽力
する岩崎恵美子の活動を追ったノンフィクションである。

既に耳鼻科医として確かな腕を持った医師が、向上心・研究心
を失わずに挑戦し続ける岩崎氏の姿は、「これぞ医学者」なの
だろうと感じた。

研究書や論文を読んだだけで、感染症に対応することは出来ない。
実際にどのような症状が出るかを理解していなければ、早期に
適切な診断を下すことが難しい。

それを実感した著者は自ら望んで感染症が多発している地域に
赴き、実際に患者の治療にあたる。

感染症は完全に予防することは出来ない。ならばどうするか。
海外へ渡航する人に対しての啓発であり、予防接種の推進で
あり、情報の発信である。

岩崎氏が勤務した成田空港の検疫所でも、仙台検疫所でも、
周囲では「そんなことは出来ません」の声が多かった。それを
説得し、感染症予防のみならず検疫所がどんな機関であるのか
の広報に力を入れて行く。

感染症を最小限に留めたい。その思いが岩崎氏を突き動かして
いる。非常にパワフルな人だと思う。

幾重にも予防策を講じても、「絶対」ということはない。いくつ
もの場面を想定し、準備を怠らないことなのだと思う。

岩崎氏の活動を丹念に追い、感染症の怖さもじわじわと伝わって
来る。若干、文章が読みにくい部分もあったが、概ね興味深く
読めた。

ただ、私は岩崎氏が感染症の専門家になるきっかけとなった
ポーランドアメリカ人の医師の「その後」の方が気になって
しまったのだけれど。

 

 

限りない感謝を

「今日(こんにち)をもち、天皇としての務めを終える
ことになりました。
 ただ今、国民を代表して、安倍内閣総理大臣の述べられた
言葉に、深く謝意を表します。
 即位から三十年、これまでの天皇としての務めを、国民への
深い信頼と敬愛をもって行い得たことは、幸せなことでした。
象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に、心から
感謝します。
 明日(あす)から始まる新しい令和の時代が、平和で実り多く
あることを、皇后と共に心から願い、ここに我が国と世界の人々の
安寧と幸せを祈ります。」

今上陛下と美智子皇后陛下をいただき、平成の1万1070日を過ごせた
ことに、限りない感謝を致します。有難うございます。

象徴天皇としての在り様を体現された今上陛下並びに美智子皇后陛下
のお姿は、この先も記憶から消えることはないでしょう。

ご譲位後はどうかゆっくりとおふたりの時間をお過ごし下さい。

ところで…だ。NHKはなんで夕方の特番に保阪正康氏や所功先生と、
政治部の岩田記者を並べたんだ?安倍晋三情報をぶっ込むためか?

こういう特番は皇室担当記者だけで十分、政治部記者はいりません。

本のアリ地獄に落ちたようだ

秋篠宮悠仁親王殿下が通うお茶の水女子大付属中学校の、親王殿下
の教室の机の上に包丁2本が置かれていたとか。

この春からお茶の水女子大付属中学校に進学されたことは報道も
されているが、何故、教室と机までが分かったのだろう?それと
もただの偶然?

いずれにしても気持ちの悪い事件だ。

『人は地上にあり』(出久根達郎 文春文庫)読了。

アイデンティティーは、主体性、独自性のことと辞典にある。
よけいなことだが、翻訳書になぜ横文字が出てくるのだろう。
かねがね不思議でならない。」

そうっ!そうなのよっ!!私の場合は翻訳書ばかりではないのだけ
れど、「コンプライアンス」とか、「プライオリティ」とか、
「オマージュ」とか、「リスペクト」とか、「レガシー」とか、
ダイバーシティ」とか、「アジェンダ」とか、「リテラシー
とかさぁ。

使っている人を見ると「お前、それ、全部日本語で言ってみろ」
と突っ込みたくなるのよ。実際、ニュース番組などで政治家が口
にしているとテレビ画面に突っ込んでいるのだが…。

上記の文章以外に、吉本ばなな作品への評価にも共感した。著者
出久根達郎氏は古書店主でもあり、書籍関連のエッセイで取り
上げられる作品はどれも好意的に紹介されているのだが、吉本
作品にだけは著者比でかなり辛口な方だと思う。

本書も書籍関連のエッセイである。この種のエッセイの難点は
「読みたい本」が無限に増殖するところだ。

ある川柳作家を取り上げた田辺聖子作品が紹介されている。この
作品と川柳作家に興味を持つ。なんとなく調べてみる。そうする
と、描かれている時代背景にも興味が湧いて来る。その時、日本
以外ではどんな動きがあったのか。

どんどん田辺作品からは離れてく。そうして、読みたい本が増えて
行くという罠にはまる。自宅の書棚には未だ手を付けていない本が
残されているというのに。

文章の上手さも相まって、取り上げられている作品のどれもが
面白そうなのがまた困る。困るなら読まなきゃいいのだが、書籍
エッセイは定期的に無性に読みたくなるから、また困るのだ。

そうして、私は本のアリ地獄へ落ちて行くのだ。

 

人は地上にあり (文春文庫)

人は地上にあり (文春文庫)

 

 

編集者の腕に問題あり

間もなく令和への代替わりである。10月には新しい天皇
なられる皇太子殿下並びに妃殿下のパレードが行われるの
のだが、先般、そのコースの検討案が報道された。

平成の代替わりより遠回りのコースなんだよな。しかも自民党
本部前を通る模様。

平成の代替わりと同じコースでよくないか?

『差別と日本人』(野中広務/辛淑玉 角川oneテーマ21)読了。

小学生の高学年だったか、中学生になってからだったかは
忘れたが、学校で「部落差別に関する映画を観る」という
授業があった。

私の耳には「部落」が「ブラック」と聞こえ、「なんで日本で
黒人差別の映画を観るんだろう」と思った。

長じて私の住む埼玉県内でも北部では被差別部落が多くあること
を学んだが、身近に被差別者がいない環境で育った。

否、幼くて気が付かなったかもしれない。だから、映画の内容は
衝撃だった。同じ人間なのになんで出身地域ごときで差別され
なきゃいけないんだ?鑑賞後の感想にそんなことを書いたのは
覚えている。

本書は被差別部落出身の政治家・野中広務と、在日朝鮮人の作家・
辛淑玉との対談ということで興味があった。だが、少々期待外れ。

野中広務が語る自身の被差別体験は凄まじい。そしてただ単に
「差別をなくせ」と声高に叫ぶのではなく、被差別者たちも
所謂「同和利権」にしがみついてばかりではいけないと、この
利権を正すよう実際に動いている。

ただ、野中広務の話が辛淑玉を途中でぶったぎっているような
印象を受けるのは対談の内容を文字に起こした編集者の腕の
なさか。

勿論、在日朝鮮人として生まれ、差別と闘って来た辛淑玉
体験も野中に劣らず凄まじい。彼女の活動によって家族が
ばらばらになってしまうのだから。

対談途中には辛淑玉による解説もあるのだが、これも少々内容を
邪魔なのではないかと感じた。

野中広務についてはやはり本格的な評伝を呼んだ方が良さそうだ。

差別はいけない。だが、そこここに差別は依然として存在している。
何かを理由に他者を差別することで自分の優越性を確認する作業と
して。そして、優越感に浸るという享楽として。

アメリカで過激な人巣差別的な言動を繰り返した人物のDNAを調べ
たら、黒人のDNAが見つかったなんて話もあった。

日本でも同じようなことがあるかも知れないよね。

 

差別と日本人 (角川oneテーマ21 A 100)

差別と日本人 (角川oneテーマ21 A 100)

 

 

どれが正解なのでしょうか

うわぁぁぁぁぁぁぁ。完全に見落としてたよ。

マック赤坂である。東京都の港区議選に立候補してたのかっ!
今日だけ港区民になって、マック垢に投票したかったよ。

『つかぬことをうかがいますが…─科学者も思わず苦笑した102の
質問─』(ニュー・サイエンティスト編集部 ハヤカワ文庫)読了。

実は捏造をしていました。事務所勤めの編集者時代の話である。

担当していたPR誌に「読者の疑問に答える」コーナーを作った。
ただ、市販されている雑誌と違って定期購読をしている読者が
いない。だから編集部に読者からの疑問が寄せられるはずもなく、
疑問も自分で考え、その答えも自分で取材して書いていた。

明らかに自作自演である。普段、メディアの瑕疵をあげつらって
いるのに、私は過去にこんな悪行を重ねていた。心よりお詫びを
申し上げる。大変申し訳ございません。

でも、世の中にはきちんと読者から素朴な疑問が寄せられる媒体
もあるのだ。

本書はイギリスの科学雑誌「ニュー・サイエンティスト」に寄せ
られた読者からの疑問に、これまた読者が回答するという人気の
コーナーをまとめた1冊である。

「魚がおならをしないのは何故?」「鳥は眠っていても木の枝から
落ちないの?」「トビウオが飛ぶ理由は?」「船の窓が丸いのは
どうして?」等々。

それぞれの疑問について、回答は最低でも2つ掲載されている。
専門家が大真面目に回答していることもあれば、「それ、本当
かよ?」と感じる回答も多い。回答が多くなればなるほど、
どれが正解なのか分からなくなる場合もある。

紅茶関係の疑問に関しては、それぞれのこだわりがあるようで、
回答数がやたらに多い。さすが、アフタヌーンティーのお国柄。

ただ、生活関連の疑問だとイギリスと日本での違いもあるので
チンプンカンプンなこともしばしばなのと、日本語訳が硬いの
が難点。

分からないところは読み飛ばして、自分の興味のある疑問のところ
だけ読むのがいいかも。

 

つかぬことをうかがいますが…―科学者も思わず苦笑した102の質問 (ハヤカワ文庫NF)

つかぬことをうかがいますが…―科学者も思わず苦笑した102の質問 (ハヤカワ文庫NF)