今上天皇に多大な影響を与えた人物

東京マラソンの表彰式で小池百合子東京都知事がポケットに
手を突っ込んでいたとかで、「感じ悪~~~い」と言われて
いるらしい。

そんなことしなくても、例の「排除します」発言だけで十分に
感じ悪いんだけどね。

小泉信三──天皇の師として、自由主義者として』(小川原
正道 中公新書)読了。

「霊前にしばしの時をすわりおれば みみにうかびぬありし日の声」

その死に際して未亡人に贈られた今上天皇の弔歌である。

小泉信三。皇太子時代の今上天皇東宮御教育常時参与であり、
慶応義塾長であり、マルクス主義批判者であり、経済学者である。

このうち、私が知っているのは東宮御教育常時参与であったこと
と、慶応義塾長だったことくらい。特に今上天皇に多大なる影響
を与えた人として興味を惹かれる人物である。

その小泉信三が、先の大戦中は戦意高揚に一役買い、塾生たちの
愛国心を煽っていたとは。平和を願ってやまない今上天皇の家庭
教師のような存在だったので、彼が戦中に展開した戦争肯定論は
いささか意外な気がした。

ただ、戦後はこの点を自ら反省しており、GHQ公職追放からも
辛くも逃れている。だからこそ、お妃選びにも係わり、戦後の
「新しい皇室」像に一役買ったのかもしれない。

「あとがき」も含め、200ページ足らずのページ数なので、かなり
駆け足の評伝になっているが、小泉信三という人物の概略を掴むに
はいいかもしれない。

福沢諭吉吉田茂との関係などもあって、面白いことは面白いのだが、
個人的にはサブタイトルの「天皇の師として」の部分に期待して手に
したので、食い足りなさが残った。

平成も間もなく終わる。象徴天皇としてどうあるべきかを模索し続け
今上天皇の姿を、小泉氏はどのように見たのかに興味があるが
即位さえも見届けず死去しているので私の叶わぬ思いだな。