お前も心の友にしてやろうか

『おれの墓で踊れ』(エイダン・チェンバーズ 徳間書店
読了。

女の子でも男の子でも、思春期には同性に対して友情以上の
感情を芽生えさせることがある。この時期の脆く儚い気持ち
が小説の題材になることもままある。

本書もそんな作品のうちのひとつだ。

16歳のハルは、ある日、友人のヨットを勝手に漕ぎ出して
操作を誤り、転覆させてしまう。そこへたまたま通りかかった
少年に助けられる。

物語に影響され、「心の友」を求めていたハリーは、自分を助け
てくれた18歳のバリーに幻想を重ねる。

確かにふたりで過ごす時間は幸せだった。ただ、そんな幸せは
長く続かない。出会いからわずか7週間後、ふたりは喧嘩別れを
し、ハルの後を追ったバリーはバイク事故で亡くなってしまう。

そうして、「心の友」であったハルは生前にバリーと交わした
約束を実行に移す。その約束とは「どちらかが死んだらもうひとり
が死んだ相手の墓の上で踊る」ことだった。

実際に1966年に墓を破損したとして起訴された少年の事件に発想を
得て書かれた作品だが、本書ではハルの手記、ソシアルワーカーの
報告書という形式で物語が進み、ハルとバリーの出会いからふたり
の間に起きた出来事、バリー死後のハルの心理状態などが描かれる。

大切な人を失った時の複雑な感情は、どんな年齢だろうと変わらない。
だが、10代という揺れ幅が大きな年代だけに混乱するハルの気持ちが
手記という形式であるからこそ伝わってくるのかもしれない。

しかしなぁ、なんで「児童書」の分類に入ってるの?この作品。
もろにホモセクシュアルな描写もあるので、ヤングアダルトなんじゃ
ないかと思うんだが。

小説を読むのことがめっきり少なくなったので、何度もつっかえ
ながらも読了って感じでした。

きっと、登場人物と同じ10代の頃に読んだなら、もっと共感できる
部分もあったのかもしれない。だが、残念ながら私の感性は既に
鈍っているようで、キラキラしている思春期なんて遠い昔だよ。
同性同士の友情以上のお話って、もう読めないかもしれない。

あ、『真夜中の相棒』(テリー・ホワイト)は除く…だけどね。

 

おれの墓で踊れ

おれの墓で踊れ