人間であることを忘れるな

『新移民時代 外交人労働者と共に生きる社会へ』(西日本新聞社:編
 明石書店)読了。

最低賃金を下回る時給、長時間の過酷な労働、人権などまったく認め
ない虐待。しかし、転職は認められない。逃げ出せば逮捕される。

日本政府が表向き「国際貢献」と称する外国人技能実習制度の実態は、
低賃金で日本人がやりたがらない仕事の労働力を賄う奴隷制度に他
ならない。

入管難民法改正案を今国会中に成立させたい政府だが、法務省が提出し
た実習生への聞き取り調査のデータにさえ誤りがあり、拙速に過ぎるの
ではないかと感じている。

技能実習生や留学生は日本の労働現場に欠かせない存在になっている。
短い期間だったが、ビジネスホテルのルームメイクをやっていた。
責任者こそ日本人だが、スタッフのほとんどがヴェトナムからの
留学生の女の子たちだった。

本書はアジアからの留学生が多く暮らす九州の西日本新聞の連載記事
をまとめた作品である。実習生・留学生の労働の実態、現地の送り出
し機関や日本語学校の問題点、外国人を積極的に採用している企業の
成功例、受け入れる日本側に不足している点などを記している。

当たり前のことだが、労働力=人間であるのだよね。今回の入管難民法
改正案で政府は単純労働にも外国人の就労を拡大しようとしているが、
彼ら・彼女らは単なる「安い労働力」ではなのだ。

人間であり、生活者である。その点が欠如していやいないかと思う。
勿論、日本の習慣や文化を彼ら・彼女らに理解してもらうことも
大切だが、来日する人たちの国の習慣や文化を私たち日本人も理解し、
受け入れることを忘れてはならないのではないか。

本書は外国人労働者受け入れを肯定的に捉えているので反対派には
納得できない部分もあるかもしれない。それでも一読の価値はある
と感じる。

日本政府も「移民政策ではない」と詭弁を弄するのは止めた方がいい。
だって、既に移民流入は世界第4位なのだから。そして、入管難民法
正案を通すのであれば、彼ら。彼女らをサポートする政府主導の組織
を設立してからの話ではないのか?

何度でも言う。労働力=人間なのだ。