映画もいい、原作もまたいい

日大アメフト部、例の悪質タックル事件以降、いろんなことが
出て来ちゃったね。

コーチの暴力によって部員20人が退部だとか、選手たちが声明を
出すと表明したらコーチ陣から「自分たちの首を絞めるだけだぞ」
と脅されたとか…。

今回の被害者である関西学院大学の選手が試合に復帰したが、
加害選手に対して「フットボールをやる資格がないと言っていたが、
そんなことはない。選手として戻って来て欲しい。また日大と
試合をしたい」と言っていた。

日大の学長や元監督・コーチたちに比べてなんと立派なことか。

『新装版 野性の証明』(森村誠一 角川文庫)読了。

「お父さん、怖いよ。何か来るよ。大勢でお父さんを殺しに来るよ」

これは映画でだけの台詞だったのだね。原作にはなかった。という
訳で、「映画は観たけど原作は読んでなかった」シリーズで久し振り
に小説である。

東北の寒村で起きた村民虐殺事件。唯一生き残った少女・頼子は目の
前で両親が惨殺されたショックで記憶を失った。

その頼子を養女とし、彼女を伴って福島県羽代市で保険の外交員として
生活する味沢だったが、地元の有力者・大場遺族が警察までをも牛耳る
街で新たな事件に遭遇する。

味沢の過去、東北の事件で味沢を有力容疑者として追う刑事、唯一頼子
が覚えている「青い服の男の人」、大場一族が次々と味沢に仕掛ける
罠が複雑に絡み合う。

映画で味沢を演じたのは高倉健でかなりストイックな印象だったが、
原作では味沢の内面が描き込まれていた。味沢の過去についても
原作では後半にならないと明らかにならない。

映画のストーリーが頭にあったので、「あれ、こんな話だったけ」
と感じる部分も多々あったが、原作は原作で面白くぐんぐんと
引き込まれた。

映画のラストは味沢と自衛隊のドンパチとなってる。原作でも味沢の
大立ち回りはあるがそこまで派手ではなく、「あ、これで終わり?」
と些かあっけなかったが、読後には越なさが残る。

やっぱり上手いな、森村誠一は。さぁ、原作とは別物として、もう一度、
映画を観よう。