海の深くには何かが眠っている

「核実験場を廃棄するから取材してもいいよ〜。でも、あんまり
広い場所が取れないから、中国と韓国、アメリカ、ロシア、イギリス
の記者だけね」

あぁ…北朝鮮から取材にも呼ばれない日本。やっぱり蚊帳の外だわ。

『水中考古学 クレオパトラ宮殿から元寇船、タイタニックまで』
(井上たかひこ 中公新書)読了。

一攫千金を狙って沈没船の金銀財宝を引き上げようとする海底深くに
潜るトレジャーハンターがいる一方で、学術調査の為に海に潜る人
たちがいる。

本書は後者のお話。トレジャーハンターも学術調査も、海の深くで
眠る獲物を発掘するのってロマンだと思うわ。

地上の遺跡と違って発掘作業には困難が伴う海底という条件からか、
水中考古学の歴史は意外と浅いのだ。ダイバーが潜水できる時間も
限られているし、堆積物などを取り除きながらの作業になるので
時間もかかる。

それでも、技術の発達で近年では事前調査で、沈没船の位置などの
特定がある程度正確になってはいるようだ。そのうち、人間が潜ら
なくても沈没船の調査・引き上げが出来るようになるのかな。

引き上げた沈没船の保存の為の処理や、船と共に沈んだ生活用品
から当時の文化を知る部分は面白かった。

ただ、本書では沈没船の事例ばかりで海底遺跡についてはエジプト・
アレキサンドリア沖のクレオパトラの海底神殿だけだったのが残念。

インドのドワールカ神殿や、与那国島海底遺跡の話もあるかと
思ったんだよな。沈没船にもロマンはあるが、海底遺跡ってそれ
以上に想像を掻き立てられるのだ。

だから、個人的にはこの辺りの話がもう少し欲しかった。沈没船の
事例ばかりなので中だるみしてしまったのは、読み手である私の期待
と若干ずれていたからかな。

まだまだ若い学問である水中考古学の概論というところか。