あの声の子供は一体どこに

天皇陛下、84歳のお誕生日おめでとうございます。

という訳で、天皇誕生日一般参賀で皇居へ行って来た。
凄い人出だなと思っていたら、ニュースで平成で一番の来場者数
と言っていた。

こうやって、今上陛下のお誕生日を祝うのも来年までかと思うと
なんかしみじみしちゃう。来年も絶対行くぞ〜。

『罪の声』(塩田武士 講談社)読了。

京都でテーラーを営む曽根俊也は、父の遺品から黒革のノートと
カセットテープを見つけた。カセットテープに録音されていたのは
幼き日の自身の声。しかし、その声が告げていたのは昭和の未解決事件
である連続企業恐喝事件で犯人の指示を企業に伝えた子供の声だった。

時を同じくして、大日新聞社の文化部記者・阿久津英士は年末特別企画
の取材に駆り出される。大日新聞が取り上げたのは、やはり連続企業恐喝
事件で逢った。

モデルになっているのは「かい人21面相」を名乗る犯人グループが起こ
したグリコ・森永事件である。

この事件をモデルにした高村薫レディ・ジョーカー』は事件発生中の
犯人グループと警察側の捜査を描いた作品だったが、本書は事件発生から
31年を経て事件の推移を描き、意図せずに事件に係わってしまった「子供
たち」の「その後」を描き、犯人グループの動機や事件の過程で犯人たち
の間に何があったのかを肉付けしている。

阿久津記者が過去の事件の手がかりを追う過程では「ああ、こんな見立て
もあるかもな」と思うし、もし、実際の事件で犯人グループの指示を読み
上げた、あの声の子供が今も存命ならどしているのだろうと考えた。

小説なので恐喝された企業名こそ異なってはいるが、グリコ・森永事件を
リアルタイムで知っている世代には「そうだったな」と思い出させるし、
知らない世代でも事件の概要を掴める。

小説としては全体にまとまりがよく、阿久津記者の推理部分も読ませるし、
曽根俊也が黒革のノートとカセットテープの謎を追う箇所では家族が
犯したかもしれない罪を暴こうとする苦悶も伝わって来る。

ただ、阿久津記者が犯人グループのひとりに接触した際に「正義」と
言う言葉を相手にぶつけた部分は少々気になったかな。

映像化したら面白そうだが、配役が難しいかもな。