熱湯の流れる川があるだと?

ドイツの航空会社のパイロットたちが、難民申請を拒否された
人たちの強制送還に反対し、222便のフライトがキャンセルに
なったとか。

難民受け入れ政策で窮地に立っているメルケル首相だが、ドイツ
はまだまだ捨てたもんじゃないな。

体の不調を訴えた人をほったらかしにして死なせちゃう日本の入国
管理局はドイツのパイロットの爪の垢を煎じて飲めばいいのに。

『煮えたぎる川』(アンドレス・ルーソ 朝日出版)読了。

子供の頃、祖父から聞いたスペインによるペルー征服の話。そのなかに
出て来たのがアマゾンのジャングルの奥深くにある黄金都市と、「煮え
たぎる川」。

成長して地質学者になりペルーの地熱分布を研究するうちに著者は
思い出す。そうだ、昔、祖父に聞いた「煮えたぎる川」はどこに
あるのだろうか。

上級研究者や他の研究者に質問をぶつけても、「伝説でしかない」と
一蹴されてしまう。しかし、著者は祖父の話が伝説だとは思えない。

ペルー側のアマゾン流域に幻の「煮えたぎる川」を発見する旅に出る。
なんていうと探検物語のようだが、実は「煮えたぎる川」はあっさりと
見つかる。

伝説でも何でもない。実際に川からは湯気が立ち上り、高いところでは
96℃の熱湯が流れる立派な川は存在した。そして、その場所がシャー
マンが運営するヒーリング・スポットとして、外国人観光客に人気の
場所でもあった。

本書の主題は「煮えたぎる川」の発見譚ではなく、アマゾンの奥地に
まで迫る自然破壊だ。原生林から立派な巨木が伐採され、跡地は焼き
払われて牧草地となる。

先住民が精霊の宿る場所としていた地域が、徐々に破壊されて行く。
実際に著者が調査の為に訪れる度に、無惨に焼き払われた土地が
広がって行く様はなんとも言えない気持ちにさせる。

文明と文化の衝突は止めることは出来ないのであろう。だったら、
文化を残しながら文明を取り入れ、双方にとって何がより良きこと
なのかを模索するべきなんだろうな。

意外だったのは石油発掘会社の存在が、アマゾンの自然を守るのに
役に立っているとのことだ。厳しい環境基準や、従業員への教育が
行き届いている為に、無闇に自然に手を加えることがないらしい。

シャナイ・ティンピシュカ。「太陽の熱によって沸騰するもの」と
の名前を持ち、熱湯が滔々と流れる川。日本のバラエティ番組で
も取り上げられたようだ。私は見てないのだが、このような場所で
バカ騒ぎをしていないことを祈りたい。

先住民が父祖の代から精霊と共に過ごした場所なのだから。

尚、何故川に熱湯が流れるのかのメカニズムの解説も面白い。人間は
地球のあらゆる場所に行けるようになったが、自然には人智を越えた
場所がまだまだあるんだろうな。