エロ本自販機もまた、滅びゆく文化である

『全国版 あの日のエロ本自販機訪探記』(黒沢哲也 双葉社
読了。

子供の頃、不思議な自販機がふたつあった。ひとつは「明るい
家族計画」と書かれた避妊具の自販機。ディスプレイの小さい
箱が可愛らしくて、でも何のためのものだか分からなかった。

そして、もう一つがディスプレイに銀色のフィルムが貼られて、
中身がさっぱり分からない自販機。

共に同じ歳の親戚の家に遊びに行く立ち飲み屋さんが並ぶ一角
で見掛けたのだが、子供心に大人に「あれは何?」と聞いては
いけない気がしていた。

中学生頃には両方ともなんの自販機かは理解した。ただ、エロ本
の自販機は銀色のフィルムのせいで昼間では中身が分からなかっ
た。興味津々だったが、そのうち親戚の家に遊びに行くことが減り、
自然と目にする機会がなくなった。

月日は経ち、専門学校へ通っていた時代。場所はどこだか忘れ
たが、あのエロ本自販機に再会した。しかも夜である。中身が
見えるではないかっ!

近寄ってまじまじとみる。あぁ、確かにエロ本だ。これが長年知り
たかった(?)中身なのかと思う。感慨深さに硬貨投入口にコイン
を…投入しませんでした。

学生時代は本当にお金がなかったので、買うまではしなかった
けどあのフィルムの向こう側が見られただけで満足だったのを
覚えている。

そんなエロ本自販機も時代と共に絶滅寸前になっているようだ。
本書は北海道から九州まで、エロ本自販機を訪ね歩いた記録
である。

もうこれだけで凄いと思うの。インターネットなどで情報を集め、
実際に足を運んで写真を撮って来る。著者のこの情熱だけで
共感しちゃうの。あ、一応、私は女性なんだけどね。

本書の大半は「エロ本自販機カタログ」だが、エロ本自販機がど
のように変遷したか、規制する側との攻防、そして現存する業者
へのインタビューなども掲載されているので、情報が豊富。

JT(日本たばこ)のPASMO導入より10年も前に、エロ本自販機が
運転免許証読み取りで未成年への販売を防止していたなんて
話には感心してしまった。

そして、日本各地のエロ本自販機設置場所を紹介しながらも、
そこは性的マイノリティの方たちの待ち合わせ場所になっていた
り、こっそりと購入しに来る人がいるので見に行く時にはマナー
を守ってと呼びかける著者の心遣いがいい。

インターネットで様々なアダルト・コンテンツを見るのが可能な時代。
エロ本自販機も徐々に滅びて行く文化なのかもしれない。

尚、本書には実際に自販機で販売されているエロ本がいくつか掲載
されているが、エロ本自体が主題ではないのでアダルト・コンテンツ
目的で読むと肩透かしかも。