霊園で日本近代史を知る

72年目の終戦記念日である。本当は「敗戦」なんだけどさ。

日本武道館での式典での挨拶で、日本国首相の安倍晋三
今年も「反省」の言葉なし。陛下は今年もお言葉に含めてい
らっしゃったのにね。

しかし、「謙虚」という言葉とは程遠い安倍晋三が挨拶の中に
「謙虚」なんて言葉をぶち込んで来るから信用ならないんだ
よね。

本当は日本武道館よりも靖国神社へ行って「英霊」とか「御霊に
感謝のまこと」とかの美辞麗句を並べたかったんじゃないかしら。

『東京多磨霊園物語 時代を彩ったあの人びとに会う』(立元幸治
 明石書店)読了。

毎年、この時期は戦争関連の作品を立て続けに読むのが恒例な
のだが、今年はお盆に合わせてって訳でもないが霊園散策エッセイ
である。

東京都府中市小金井市にまたがる日本初の公園墓地・多磨霊園
には日本の近現代史に名を残した人々が多く眠っている。本書は
著者が設定したテーマに沿って、それぞれにふたりの人物の墓を
訪れ、人物に思いを馳せている。

明治以降の近現代史は好きだし、評伝もよく読む方だがその人が
亡くなった後にどこに眠っているかまでは思い至らなかったわ。

私の敬愛するジャーナリスト桐生悠々多磨霊園に眠っていたのか。
著者ではないけれど「ここに居られたのですか」って感じだわ。没後
50年に建てられたという墓碑には「蟋蟀(こおろぎ)は 鳴き続けたり 
 嵐の夜」との悠々自身の句が刻まれている。

嵐の時代に反軍・反戦を貫いた悠々らしい句だと思う。

連合艦隊司令長官東郷平八郎山本五十六の墓が隣同士で並ん
でいるのなんてまったく知らなかったし、軍部の予算増額要求を撥ね
付け2.26事件で暗殺された高橋是清と軍部主導の日本の行く末を
憂いながら亡くなった最後の元老・西園寺公望もここに眠っている。

そして、岡本一平・かこ子夫妻にその子供である岡本太郎。芸術一家
であり、不思議な関係の家族であるのは知ってはいたがお墓もユニーク。

墓域の右手には「太陽の塔」を思わせる一平の墓と、観音様が彫られた
妻かの子の墓が並び、左手には両親の墓を眺めるように両手で顔を
支える太郎の墓がある。この岡本家の墓は全体が芸術的だ。

もう見に行きたいお墓が多すぎるわ。著者はご自宅が多磨霊園
近いらしく、散策場所として気軽に訪れられるらしいが我が家から
多磨霊園は遠いのよ。ちょっとした小旅行になってしまう。

それにしても、多くの著名人が眠る霊園だね。東大総長を務めた南原
繁に矢内原忠雄天皇機関説美濃部達吉、「サザエさん」の長谷川
町子に「のらくろ」の田川水泡、「ルパン三世」の声優・山田康雄に女優・
岸田今日子

アフガニスタンマスードのお墓参りに行きたいなんて言っている場合
ではなかった。まずは多磨霊園に行かなくちゃ。桜の季節が美しいら
しいから、2泊3日くらいで霊園散策がいいかもな。

そうして、著者のようにそこに眠る人たちに思いを馳せてみたい。

尚、同じ著者で青山霊園篇もあるらしいので、そのうち探そう。