戦犯を免責された男

朝日記者「ある政治家が『政府があらゆる記録を国民に残すのは
当然で、議事録は最も基本的な資料。その作成を怠るということは
国民への背信行為だ』と本に記されてた。どなたかご存知ですか」
官房長官「知りません」
朝日記者「官房長官の2012年の著作です。現状と照らし合わせて
忸怩たる思いはないか」
官房長官「私は残していると思いますよ」

遂に官房長官の定例記者会見がコントと化したのか。そう言えば、
天敵である東京新聞の望月記者に「ここは質問に答える場所では
ない」とかも言ってたな。

やっぱり、内閣総辞職でお願いします。

『「飽食した悪魔」の戦後 731部隊と二木秀雄「政界ジープ」』
加藤哲郎 花伝社)読了。

森村誠一悪魔の飽食』を読んだ時はかなりの衝撃を受けた。
関東軍防疫給水部本部、通称731部隊は表向きは感染症
予防や対策などの設立されたのだが、その実態は細菌戦の
為の生物化学兵器の研究や開発に伴い、人体実験を行って
いた組織だ。

森村誠一の著作に関しては後に掲載された写真が問題視され
た。このことで731部隊の人体実験自体が捏造だとの説が一部
にはあるようだ。慰安婦問題と同じ構図なのだろうな。

加害の記憶は刻みたくないのは人間の本能なのかもしれない。
しかし、戦後、戦勝国に戦犯として裁かれた人たちがいた一方
で、GHQにより免責された実質戦犯たちがいたことは確実だと
思う。

安倍晋三の祖父である岸信介もその一人だろうし、732部隊の
中心的人物だる石井四郎もそうだろう。そして、本書が取り上げる
二木秀雄もだ。

731部隊については研究が進んでおり、本書以外にも優れた作品
となっているので詳細は省くが、この二木秀雄なる人物については
まったく知らなかったので面白かった。

研究データをGHQに提供することで戦犯としての訴追を免れた
二木をはじめとした元731部隊隊員たちが戦後も跋扈している
のだよね。

戦後に二木が創刊した雑誌「政界ジープ」が企業の不祥事をネタ
にして恐喝事件を起こした政界ジープ恐喝事件、GHQとの深い
関係をうかがわせる「日本ブラッドバンク」の設立は後々売血問題
に発展するきっかけか?

この「日本ブラッドバンク」は後年、薬害エイズ問題を引き起こす
ミドリ十字」の前身である。

余談だが、売血については私が敬愛する故・本田靖春氏が読売
新聞記者時代に「黄色い血追放キャンペーン」を行っている。

苦しい戦後を生き抜いたり、戦中の自身を顧みて医学の世界に
背を向けた元隊員もいた一方で、二木のように戦中の人脈を
引き摺りながらも、時代の波を上手に乗り切った人もいるんだ
なと思うと複雑な気分だ。

二木の戦後も興味深く読んだが、ゾルゲが日本の細菌戦準備の
情報を掴んでいたとの話が面白かった。