背後からアイツの足音が聞こえて来る

2020年東京オリンピック組織委員会は素晴らし事を考えた。
選手村内の選手たちの交流施設の建設資材である木材を、
自治体から無償で提供させよう!

はい、搾取ですね。この施設、大会終了後は解体させるんだよ
ね?そうしたら、解体して元の自治体に持ち帰ってもらって「これ、
東京五輪の施設の一部に使われたんだよ〜」って展示しても
いいってことらしわ。

ちゃんと金払えよ。どうせ運営費用を節約するなら、電通にボラン
ティアさせたらいいんじゃないか?勿論、下請けのプロダクション
とか使うのはナシ。社長以下、社員総出で無償で広報活動なら
一番費用を抑制できると思いますけどね。広告代理店なんて
濡れ手で粟なんだから。

あと、総合演出も無償でね。

『〆切本』(左右社編集部:編 左右社)読了。

子供の頃、漫画雑誌を読んでいると時々「作者急病の為、○○は
休載しました」なんて書いてあるページがあった。好きな漫画家
だと作品の続きが読みたいばかりに、作者の病気快癒を願った。

長じてそれは急病でもなんでもなく、原稿が締め切りに間に合わない
時の決まり文句だと知った。

そして、なんだかんだがあって編集者になった。そうしたら、自分が
締め切りに追われる身になった。

文芸誌や作家担当の編集者ではなかったので、相手の原稿の上がり
をじりじりして待つ体験はないのだが、原稿を書いている背後で印刷
所の担当者が待っているとの状況は多々体験した。

本書は締め切りと格闘(?)する、明治から現代までの作者の日記
やエッセイ、手紙などをまとめた作品だ。時代や執筆方法が変わろう
とも、締め切りに苦しめられる状況には変化がないんだねぇ。

いや、勿論、きちんと締め切りを守る作者の作品もあるんだ。森博嗣
の「締切に間に合ったら、一割多く原稿料を払う、遅れたら、原稿料を
減額する、という契約にしたらどうですか?」との提案は最もなんだ。

森氏も書いているのだが、編集者は楽して取った原稿より、苦労して
得た原稿の方を有難がるんだよね。これ、出版業界の病理だと思うわ。

収録作品のなかにはいくつか「え、締め切りテーマでこの作品?」と感じ
たところもあるが、全体としてはそこそこに面白かった。

でもね、途中で紙質が変わっていると読みにくいの。特に同じ作者の
作品のなかで変わってしまうと、文字を追うのに戸惑うの。これは読ん
でいる私が老眼のせいもあるんだけどね。

遠くに聞こえていたと思っていた足音が、急に背後で聞こえるようになる。
そして、気がつくと背後にピタッと張り付いている。奴の名は「〆切」。
編集者家業が開店休業なので、今は追いかけられることも、張り付かれ
ることもなくなったけど。いなきゃいないで、ちょっと寂しいかも。