三色旗とラ・マルセイエーズを再び

凄いな、将棋の藤井四段。連勝記録が止まらない。あと1勝で
歴代最多の連勝記録になるのかな?

将棋会館にグッズでも買いに行くかな。あ、実際に行ったら私は
ひふみんの扇子を買ってそうだけど。

パリは燃えているか?[新版] 下』(ラリー・コリンズ&ドミニク・
ラピエール ハヤカワ文庫)読了。

「パリ解放」。第一報は誤報だった。しかし、4年に渡るドイツ軍の
占領を耐え忍んで来たパリ市民は歓喜した。

この誤報は既成事実となる。ドイツ軍に必死の抵抗を続けるフラ
ンス国内軍からの必死の訴えに、ドイツ本国への侵攻を優先して
戦争の終結を急いだ連合国軍は作戦を変更し、ノルマンディー
上陸作戦で生き延びた一部の部隊をパリへと急がせた。

その場に居合わせた人々の体験は歴史という大きな流れの中で
は表に現れることはない。だが、本書は上巻共々に無名の人々に
焦点を当てならがら、大きな流れを追うという手法が素晴らしい。

本来、ヨーロッパ戦線の主役であるはずのドゴールやアイゼンハ
ワー、ヒトラーでさえ脇役に過ぎないのだと思う。歴史の本当の
主役は、本書が綿密に描いた市井の人々や前線の兵士たちだ。

アメリカがこれほどフランスに歓迎されたことは後にも先にもなった
だろう。自分たちを解放する為にパリ入城を果たしたアメリカ軍兵士
たちを、パリ市民は大歓迎する。

きっと古い戦争を闘った人なのだろう。持てるだけの勲章をすべて
つけた老人は、大粒の涙をぬぐおうともせずに連合国軍の兵士た
ちを眺めていた。

癌を患い寝たきりの老婦人は、パリを救ってくれたアメリカ兵に会い
たいと自分の寝室にひとりのアメリカ兵を招き入れる。「これがあな
たをこれからの戦争のあいだ守ってくれますよ」。枕元のテーブルに
置かれた十字架を、老婦人は兵士に差し出した。明日もまた来ると
約束した兵士が、翌日、その家を訪ねた時に既に老婦人は亡くなっ
ていた。

4年前、ヴィシー政権の誕生と共にフランスを追放されたドゴールの
呼びかけに応えて、自由フランスに参加する為に家族にも知らせず
に出奔した青年たちがいた。パリ解放と共に家族との再会を果たし
た者がいる一方で、パリ目前で命を落とした者もいた。

4年間のドイツ占領時代にドイツ軍に協力した女性たちが丸刈り
されたのは多くの写真が残されているのでも有名だろう。

そして、フランス内部ではパリ解放の一方で早くもドゴール派と共産
主義者との対立が表面化する。ドゴールが、再度歴史の主役となる
のはパリ解放後なのだと思う。

敵の手に渡るくらいならパリを殲滅せよ。ヒトラーの命令であった。
だが、この美しい街をワルシャワ同様の廃墟にすることに躊躇した
ドイツ軍パリ司令官コルティッツの緩やかなサボタージュによって、
パリを代表する建造物は破壊を免れた。私たちが今でもノートル
ダム寺院や凱旋門エッフェル塔が見られるのはパリではドイツ軍
による致命的な破壊工作が決行されなかったことによる。

だが、パリ陥落の報を受けてもヒトラーは自分が下した命令が実行
されていることを信じていた。例えパリが陥落しても連合国軍が手
にするのは廃墟となったパリでなくてはならない。

「パリは燃えているのか?」

ヒトラーは側近に問うた。確かにパリは燃えていた。ただし、それは
ヒトラーが下した破壊命令によっての炎で燃えていたのではない。

ドイツ軍の旗に変わって再び掲げられた三色旗が翻り、ラ・マルセイ
エーズが響き渡るパリは、解放の歓喜で燃えていたいのだ