イチゴジャムのサンドウィッチが食べたい

明らかに戦後生まれの人が教育局語を礼賛する。戦前・戦中の
教育を受けた訳でもないのに。まあ、日本国憲法下で生まれ
育ったのに、大日本帝国憲法を復活させようとするのと同じ
かもね。

ということは、勿論、教育勅語は暗唱できるし、ご自宅には天皇
皇后両陛下の御真影が掲げてあり、毎朝皇居遙拝してるんだよ
ね?稲田防衛相。

昭和天皇のお食事』(渡辺誠 文春文庫)読了。

昭和天皇の食にまつわるエピソードでは好きなものがいくつかある。
ふかし芋がお好き。それもサツマイモの皮の部分がお好きなのに、
ある時、綺麗に皮をむいたふかし芋が出て来たら「美味しくない」と
おっしゃられたとか。

お皿に載せるものはすべて食べられる物でなければいけない。しか
し、柏餅をお出ししたら餅をくるんでいる柏の葉っぱを桜餅と同じよう
にお召し上がりになり、下げられたお皿の上には柏の葉の葉脈だけ
が遺されていたとか。

この2つのエピソード、大好きなのだけれどやらかしたのは本書の
著者である渡辺氏だったのは知らなかった。

ドラマにもなった「天皇の料理番秋山徳蔵氏と、その秋山氏の跡を
継いだ中島伝次郎氏に指導を受けた最後の世代の宮内庁大膳課
の料理人である。

昭和天皇今上天皇、皇太子殿下に仕えられているのだが、本書の
大部分は昭和天皇のお話だ。日常、お召し上がりになっていた献立
の一部も掲載されている。

高級な食材を使用しているのではないが、食卓に上るまでの手間暇の
掛け方は一般家庭とはまったくの別物。だから、食材の切り方ひとつ
でも非常に厳しい基準が設けられている。

千切りにしろ、短冊切りにしろ、全部が全部、同じ大きさじゃなければ
いけない。じゃがいもはまん丸でなければいけない。だから、どんなに
切っても剥いても、形が少しでもいびつなら最初からやり直し。

大膳課に入ったばかりの著者の修業時代の厳しいことと言ったらない。
在位期間の半ばまで現人神でいらっしゃった昭和天皇の時代だから
なのかもしれないけどね。

昭和天皇の好物のひとつにイチゴジャムのサンドウィッチがある。この
サンドウィッチもただ、イチゴジャムを塗ればいいってものではない。

イチゴジャムを裏ごしして粒粒を取り除き、飴状になる手前まで煮詰め
る。それをバターを塗ったパンに流し込むようにするのだとか。

食べてみたいな、大膳のサンドウィッチ。皇居内でのお茶会や園遊会
でも出されるよね。だれか私を園遊会に呼んでくれないだろうか。なん
の実績もない一般市民ですけど…。

日常のお食事以外にも晩餐会の支度、年始の儀式用のお食事の用意
の話などもあり、「天皇家の台所」の一端を垣間見せてくれる。

渡辺氏の生い立ちも一部綴られているのだが、ご両親が非常にモダン
な人たちだったのだね。昭和20年代、30年代にご家庭でナイフとフォー
クを使って洋食だなんて。

惜しむらくは渡辺氏が54歳という若さで亡くなってしまっていること。皇室
関係では本書のほかに『殿下の料理番』も残されているので、こちらも
探して読んでみよう。

渡辺氏と家族ぐるみでの付き合いのあった映画監督・大林宣彦の「解説
にかえて」も素敵な文章だった。