「百名山の人」は「ダメな人」だった

どうしたんだろう、鴻池センセイは。例の学校法人理事長夫妻を
先日の会見では「無礼者」呼ばわりをして、かなり格好をつけて
いたのに今日は記者に対して「触るな!触ったら蹴り飛ばす」
だって。

学園側も鴻池センセイに反撃し始めたようだ。これは日本会議
内紛ってことでいいのでしょうか。

それと、大阪のチンピラ府知事。ヘラヘラしながらインタビューに
答えている場合じゃないぞ。維新だってこの件では危ういんじゃ
ないのか?

百名山の人 深田久弥伝』(田澤拓也 角川文庫)読了。

本書のタイトルそのまま、私は深田久弥に対して「百名山の人」
としか知識がなかった。代表作であり山岳紀行の古典的名著
日本百名山』は一時期、繰り返し読んだのだもの。

おおらかで豪快。そんなイメージだったんだよな。確かにそうで
はあるのだけれど、私生活では「ダメな人」だったとは。

作品と人柄は別物。分かってはいる。谷潤こと谷崎潤一郎がそう
なのだ。作品は大好きなのだが、人としてはどうかも思うもの。

戦前に発表された深田久弥の小説を読んだことはない。抒情的な
恋愛小説なのだそうだ。『日本百名山』しか読んだことがないので
あまりにも意外だった。

だが、その小説のたたき台になったのは前妻であった北畠美代が
執筆したものを、深田がリライトしていただけって。

しかも脊椎カリエスを患って病床に就くことが多かった美代がいるに
も係わらず、以前に憧れの人だった女性に再会し子供までもうけて
しまっている。

そりゃ、離婚後、美代さんが「実は深田の作品は私が書いたもの」って
暴露するわなぁ。

この頃の深田は鎌倉文士の仲間だったのだが、川端康成などはこの
「二人三脚」を見抜いていたようだ。さすがに深田本人には気づいてい
ることは告げてはいないが、あのギョロリとした目で見られたら怖い
かも。

私はこの時点で「ダメな人」認定しちゃったんだかが、小説家としては
ダメでも登山家としては優れた人だったのだと思う。

運動全般は苦手だし、登山なんてとんでもないのだけれど『日本百名
山』を読んでいると、こんな私でも「この山、登ってみたい」と思う山が
多くあった。

スポーツとしての登山には批判的で、大学山岳部が訓練として行って
いるような「しごき」は大嫌いだったという点には共感するし、山岳関係
の書籍収拾への情熱も理解出来る。

山が好きで好きで、しょうがなかった人なんだね。でも、それは実生活
からの逃避ってことはなかったのだろうか。なんて思ってみた。

1971年に茅ヶ岳登山中に脳卒中で亡くなるまで。生い立ちのみならず
交友関係までを丹念に追った良書だ。