臆病な大国の正義の犠牲者

国会議員になる前の稲田防衛相が塚本幼稚園の顧問弁護士
だったという話が流れてる。本当だろうか。

確か国会で「塚本幼稚園、知ってる?」と質問されて、「聴いたことが
ある程度」って答えてたよね。

さぁ、来週の国会はこれがテーマかな。

グアンタナモ収容所 地獄からの手紙』(モハメドゥ・ウルド・スラヒ:著/
ラリー・シームズ:編 河出書房新社)読了。

世界唯一の大国は、世界一臆病な国でもある。9.11アメリカ同時
多発テロ以降、「アメリカの正義」を振り回し続けるアメリカに対し、
そんな風に思っていた。

本書はそんな私の想いを裏付けるに十分だった。著者はモーリタ
ニア人。身に覚えのない容疑でモーリタニア当局に身柄を拘束され、
あれよあれよという間にキューバアメリカ軍基地内に設けられて
いるグアンタナモ収容所へ移送された。

その収容所内で自身の身に起きたことを書き留めた手記である。
読みやすい作品ではない。アメリカ軍の検閲を受けているので、
看守や尋問官等の固有名詞、アメリカ側に都合の悪い箇所は
すべて黒塗りになっている。約4ページに渡り、すべてが黒塗り
なんてところもある。

それでも、グアンタナモ収容所に拘束されている人々の身に起き
ている異常さは伝わる。ありもしない容疑を自白しろと迫る尋問官、
自白を引き出すために使われる嘘やでっち上げ、当然のように
行われている拷問の数々。

著者が接した看守や尋問官のなかにも少しは人間味のある人物も
いるのが救いではあるが、多くのアメリカ側の人間は世界は「アメリ
カ白人は優れている。それ以外は人間ではない」とでも思っている
ようだ。

著者がテロリストとして疑われる唯一の根拠は、2度にわたるアフガニ
スタンへの渡航だ。だが、時は東西冷戦の時代であり、ソ連がアフガ
ニスタンへ侵攻していた時代でもある。

アフガニスタン共産主義者と闘うのは、ムスリムにとっての正義で
あったばかりではなく、アメリカにとっても正義だったはずなのに。

理不尽との言葉だけは言い表せない行為が、隔離された場所で平然
と行われているのだ。人道だとか、人権だとか、人間としての尊厳だと
か、そんなものは端からないも同然だ。

これが臆病な大国の「テロとの闘い」なのだ。だが、その「テロとの闘い」
自体がアメリカを憎む芽を育んでいやしないか?と私などは思ってしま
のだけれどね。

著者の弁護団が申請していた人身保護請求は通ったものの、本書発行
の2015年時点でも著者はグアンタナモ収容所から解放されてはいない。

その時点で既に13年もアメリカ軍により不当に拘束されているのだが、
現在も継続中であるのなら、拘束期間は15年に及ぶこととなる。

過酷な環境に置かれながらもユーモアを忘れず、自分の身に起きた
ことを冷静に綴っている著者の知性に敬意を。そして、一刻も早く
故郷モーリタニアの家族の元に戻れるよう祈るしかない。

ただし、アメリカの独りよがりな正義に奪われた時間は戻って来ないの
だけれどね。