大きなニンジンがぶら下がっている

辻本清美には泣かされ、ハマコー・ジュニアからは「答弁が長い。
質問に答えて」と怒られ、無能さをさらけ出している稲田防衛相が、
先日、来日したアメリカ・マティス国防長官と会談を行った。

でっかいおリボンつきの服装に「もっときちんとしたスーツにしろよ」
と思っただけで特に関心もなかったんだが、あろうことかマティス
国防長官にふたりの顔写真でラッピングしたチロルチョコをプレゼント
したというのは本当なんだろうか。

えっとさ…同じプレゼントをするにしても日本の工芸品とかあるだろう?
なんでチョコ?それも顔写真ラッピングって、服装と一緒でどこまで
センスがなんだか。

否、それ以前に国務大臣が何してんだよ。恥ずかしいわっ!

『科学者と戦争』(池内了 岩波新書)読了。

昨年のニュースだったか。防衛省は2017年度の防衛予算のうち、
108億円を軍事研究費に充てるとあった。2016年度の実に18倍
の予算である。膨れ上がっている。

この研究費は防衛装備品の開発や安全保障の充実の為の研究
費用として、「安全保障技術研究推進制度」に応募した大学、研究
機関、企業等に割り当てられる。

太平洋戦争の反省から日本の科学界は軍事研究を拒否して来た。
しかし、どんな研究にも潤沢な研究費が充てられる訳ではない。
自由に研究する為にはもっと研究費が必要だと感じたら、防衛省
の研究をあてにしても不思議ではない。

だが、防衛や安全保障という聞こえのいい言葉を拠り所として軍事
研究に名乗りを挙げてもいいのか。民生利用も出来るのだからとの
言い訳を用意して、結局は人に危害を加えるモノを作り出すだけな
のではないか。

先日も日本学術会議がこれまでの軍事研究は行わないとしてきた
声明を巡ってのシンポジウムを開催した。法政大学をはじめとした
いつかの大学は既に軍事研究は行わないとの明確な態度を取っ
ているが、このシンポジウムでも軍事研究否定の意見が多くを
占めた。

著者自身、科学者であり軍事研究を拒否する立場を明確にして
おり、本書は賛成派の言い分をひとつひとつ潰している。

研究さえ続けられれば資金はどこから出ていてもいいではいけない
のだ。成果が出るまでは費用も気にせず、やりたいことを自由に
出来るかもしれない。

それは本当に「自由な研究」だろうか。軍事利用であるならば、
自由に公表できるはずもない。機密事項である。基礎的な研究の
目途が立てば、「あとはこちらでやりますんで。尚、このことは論文等
で発表するのは禁止です。特定機密に該当しますから」と言われて
しまったらどうだ?

これを著者は「研究者版経済的徴兵」と呼ぶのだが、納得したわ。

研究費という大きなニンジンを目の前にぶら下げて、頭脳だけを拝借
するのだものね。そうして、研究の成果は取り上げられる。

ひも付きの費用はどんなものでも胡散臭い。その見本のようだよ。甘い
言葉の裏に何もない訳がなのだから。

軍産複合体なんて言葉ある。ここに今度は「学」が加わる危険性がある。
日本以外の国では軍事研究は当たり前に行われている。それが産業に
結びついて企業は武器輸出などで儲けることができる。

既に一部の研究機関ではアメリカ軍から資金提供を受けているところも
あるが、日本は軍産学が混然一体になっていない特異な国であること
をもっと意識していいのではないだろうか。

「軍隊を持って普通の国になろう」とか言った人がいたが、軍産学複合体
の国になって「防衛の為です」とのお題目の下、開発した武器を輸出する
国にならなくてもいいじゃないか。

だって、すべての戦争は防衛から始まっているのだから。